大人は判ってくれない

大人は判ってくれない (Les Quatre Cents Coups)

フランソワ・トリュフォー監督の長編デビュー作である『大人は判ってくれない』は、1959年に公開されたフランス映画であり、ヌーヴェルヴァーグの代表的作品として知られています。この作品は、12歳の少年アントワーヌ・ドワネルの視点から、大人社会への不満や葛藤を描き出しています。

制作の背景

トリュフォーにとって師であり、精神的な支えでもあった映画評論家アンドレ・バザンが亡くなった日に、本作の撮影は開始されました。1959年4月に完成し、同年のカンヌ国際映画祭で監督賞と国際カトリック映画事務局賞を受賞し、トリュフォーは一躍ヌーヴェルヴァーグの旗手として注目を集めました。

ストーリー

アントワーヌ・ドワネルは、学校や家庭に居場所を見つけられず、息苦しい毎日を送っています。学校ではいたずらをして先生に叱られ、家庭では両親の喧嘩に悩まされる日々。そんな中、アントワーヌは親友のルネと学校をサボり、街で母親が別の男性と抱き合っているのを目撃します。嘘がばれて家を出たアントワーヌは、ルネと共に父親の会社のタイプライターを盗んでしまいますが、換金に失敗し、警察に捕まって少年審判所へ送られます。鑑別所に入れられたアントワーヌは、脱走を試み、初めて海を目にします。その広い海を前に、彼は立ち尽くし、観客の方を向いて物語は終わります。

作品の魅力

『大人は判ってくれない』は、トリュフォー自身の幼少期の体験を反映した自伝的な作品であり、子供の視点から見た大人社会の矛盾や偽善を鋭く描いています。アントワーヌの孤独や不安、そして自由への渇望は、多くの観客の共感を呼びました。また、ジャン＝ピエール・レオ演じるアントワーヌの自然な演技や、トリュフォーの斬新な演出も高く評価されています。

ヌーヴェルヴァーグ

この映画は、フランスの映画運動「ヌーヴェルヴァーグ」の代表作の一つです。ヌーヴェルヴァーグの映画作家たちは、伝統的な映画製作の枠にとらわれず、自由な表現や実験的な手法を取り入れました。トリュフォーもその一人であり、本作では、ロケーション撮影や即興演出、そして観客に語りかけるような演出など、ヌーヴェルヴァーグの特徴的なスタイルを打ち出しています。

映画史における影響

『大人は判ってくれない』は、その後の映画史に大きな影響を与えました。子供の視点から社会を描くというテーマや、斬新な映像表現は、多くの映画作家に影響を与え、その後の映画の可能性を広げました。また、本作は、トリュフォーの代表作としてだけでなく、映画史に残る傑作として、今もなお多くの人々に愛されています。

この作品の成功を受けて、トリュフォーはいわゆる「アントワーヌ・ドワネルの冒険」シリーズを次々と発表し、映画史にその名を刻みました。

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