シュタットバーン (ウィーン)

ウィーンのシュタットバーン：都市の記憶を辿る

ウィーンのシュタットバーン（Wiener Stadtbahn）は、1898年から1989年までウィーンで運行されていた都市鉄道です。「都市鉄道」を意味するこの名称は、かつてウィーン市民の足として活躍した鉄道網を指し、その路線は現在、ウィーン地下鉄のU4号線とU6号線、そしてウィーンSバーンに引き継がれています。

歴史：時代と共に変遷した都市鉄道

シュタットバーンの建設は1894年に始まり、1901年にかけてウィーン川とドナウ運河沿いに路線が建設されました。当初は旧市街を横断し、ギュルテル通りに沿ってウィーン南駅まで至る路線も計画されていましたが、予算の制約から実現には至りませんでした。

開業当初、シュタットバーンは高い運賃、煤煙、遅い速度などが原因であまり利用されませんでした。第一次世界大戦後の石炭不足により1918年には運行を停止。その後、各路線はウィーン市に貸し出され、電化された上で1925年に「ウィーン電気都市鉄道」として再開されました。

第二次世界大戦では多くの駅や路線が破壊されましたが、1955年に再建。1968年には、シュタットバーンをウィーンの新しい地下鉄に組み込むことが決定され、1981年にWD線がU4号線に、1989年にG線とGD線がU6号線に転換されました。これにより、「シュタットバーン」という名称は公式には使用されなくなりました。

駅舎：アール・ヌーヴォー建築の粋

シュタットバーンの駅舎は、初期のアール・ヌーヴォー様式建築の代表例として知られています。特に有名なのは、オットー・ワーグナーが設計したカールスプラッツ駅の2つの駅舎で、現在はそれぞれカフェと美術館として利用されています。また、フランツ・ヨーゼフ皇帝専用に造られたホフパビリオン（ヒーツィング駅東端）も、展示施設として公開されています。ギュルテル通り沿いの高架駅や郊外の駅も、一部が保存されています。

Uバーン（地下鉄）への転換：新たな都市交通システムへ

1976年以降、シュタットバーンは新たに設立されたUバーン（地下鉄）のシステムに組み込まれていきました。U4号線への転換では、ウィーン川とドナウ運河線の駅の大半が造り直され、プラットフォームの高さが95センチに引き上げられたほか、架空電車線方式から第三軌条方式に変更されました。オーストリアのSGP社によって製造された新しいUバーン車両が導入されました。

一方、U6号線への転換では、シュタットバーンのギュルテル線がほぼそのままの形で利用されました。オットー・ワーグナー様式の駅舎は可能な限り保存され、信号と電気関係のみが更新されました。駅と高架橋も改修され、左側通行から右側通行に変更されました。歴史的な路線の耐荷重能力に限界があったため、駅と線路を完全に変更するには多大な費用がかかることが理由でした。シュタットバーンのE6、c6型車両は2008年末までに廃車となり、1995年以降は低床のT、T1型車両に置き換えられました。

Sバーンへの転換：郊外へのアクセスを担う

1920年にウィーン市に貸し出されなかった路線は、オーストリア国鉄の路線網の一部として存続し、Sバーン（ウィーン近郊鉄道）の高速交通網に組み込まれました。マッツラインスドルフとウィーン北駅を結ぶ区間は、1962年以降、Sバーンの主要路線として運行されています（S1、S2、S3、S4、S7、S8、S9、S15）。

また、1932年に西部郊外を走るVorortelinie（ウィーン郊外線）では旅客列車が廃止されましたが、1987年にS45として旅客運行が復活しました。このように、シュタットバーンの路線は、Sバーンとしてウィーンの郊外地域へのアクセスを支えています。

シュタットバーンは、その歴史と美しい駅舎を通じて、ウィーンの都市景観に深く刻まれています。その遺産は、UバーンやSバーンとして現代に引き継がれ、今もウィーン市民の生活を支え続けています。

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