シュムクル

シュムクル（スムンクル）

シュムクルは、北海道の胆振地方から日高北部にかけて太平洋沿岸に住むアイヌ民族の一集団です。その名称は、アイヌ語の「sum-un-kur」に由来し、「西の人」を意味します。この集団は、17世紀にメナシクルと対立し、その歴史が受け継がれています。シュムクルは、主に沙流郡波恵村を本拠地として、ハエクルやサルンクルといった名前でも知られています。

アイヌ語の「スム」は本来「西風」を指し、河川を境にした風の吹く方角から「西」と呼ばれるようになりました。このため、シュムクルという名称は単なる地名以上の意味を持ち、地域の特性を反映しています。比較的古い文献でもシュムクルの存在が確認されており、松前矩広の記録では「シモクル」という表記が見られ、これも「西衆」を意味しています。

シュムクルの居住範囲は新冠から白老の周辺までを含むようで、独特の文化や風習が根付いていました。特に彼らの墓標は特異な形状をしており、男性は矢尻のような形で、女性は針頭のようにデザインされていました。地域に根付く伝承や風習についても、サルンクルは他のアイヌ集団とは異なる特徴を持っていました。

シュムクルの歴史は、10世紀以降の北海道の太平洋沿岸地域に形成された「太平洋交易集団」に繋がると考えられています。この交易集団がシュムクルの先祖となり、アイヌ民族の中でも独自の伝承を持つようになりました。シュムクルの人々は「祖先は本州から来た」とする伝承を持ち、本州の奥羽アイヌを核として集団が形成されたと推測されます。

1653年に起こった歴史的な出来事が、シュムクルとメナシクルとの関係に大きな影響を与えました。ハエクルの首長オニビシがメナシクルの首長カモクタインを暗殺した事件から、シュムクルの歴史は一層激しいものとなりました。その後、シャクシャインという人物がカモクタインの後を継ぐが、オニビシを殺害し、松前に向けた攻撃を試みたものの、敗北を喫し、最終的には命を落としました。このような戦いを経て、シュムクルは松前藩の統制が強化される中で強い影響を受けたのです。

藩の政策によって地域の構図が変わるなかで、シュムクルは他のアイヌ集団に対して友好的な態度を示したため、胆振・日高地方では比較的アイヌ民族の人口が高い傾向にありました。シュムクルの歴史と文化は、現代においても考察の対象となり、アイヌ民族全体の中でも特異な位置を占めています。

このように、シュムクルはアイヌ民族の多様性を示す一例であり、彼らの独自の文化や歴史は、北海道のアイヌに対する理解を深めるための重要な側面を持っています。将来的には、シュムクルについてのさらなる研究や文化継承が期待されています。

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