シュー (エジプト神話)

エジプト神話において、シュー（Shu）は広大な大気を司る重要な神格です。彼は、エジプト九柱神（エンネアド）と呼ばれる、ヘリオポリスにおいて崇拝された主要な神々のグループの一角を占めています。

誕生と家族

シューの誕生は、世界の始まりに深く関わる神話の中で語られます。彼は創造神アトゥム（後に太陽神ラーと同一視されることもあります）から生まれたとされています。アトゥムがただ一人で世界を創造する過程で、自らの力によって最初に生み出した子供たちがシューと、彼の妹であり後に配偶者となる湿気の女神テフヌトでした。

シューとテフヌトは兄妹でありながら夫婦となり、彼らの間には二人の子供が生まれました。一人は大地を象徴する男神ゲブ、もう一人は天空を象徴する女神ヌトです。

天と地を分ける神話

シューに関する最も有名で象徴的な神話は、彼が自身の子供であるゲブとヌトを引き離し、混沌とした原初の状態から秩序ある世界を形作ったというものです。

神話によると、生まれたばかりのゲブとヌトは強く抱き合い、離れることがありませんでした。この状態は、天と地が区別されず、渾然一体となっていた宇宙の原初的な姿を表しています。そこにシューが介入し、自身の子供たちを力強く引き離したのです。彼は大地であるゲブの上に立ち、両腕を高く上げて天空であるヌトを支えました。これによって、天と地の間に空間、すなわち大気が生まれ、世界が二分されたとされています。

この神話は、古代エジプトにおける世界の構造観を象徴的に示しており、生命が存在するための空間（大気）の重要性を説いています。シューが天と地の間を隔てる存在として位置づけられることで、彼は単なる空気だけでなく、光が差し込み、生命が呼吸し、風が吹く、世界の成り立ちに不可欠な空間そのものを司る神となりました。

図像表現

この天と地を引き離すシューの姿は、古代エジプトの美術や壁画において頻繁に描かれました。最も典型的な図像では、大地を象徴して横たわるゲブの上に、シューが立ち、両手で頭上にいるヌトを支える構図が取られます。ヌトはしばしば、星をちりばめた体で、弓なりになってゲブの上を覆うように描かれます。この三柱の神々による配置は、古代エジプト人が世界をどのように認識していたかを示す、非常に有名な図像の一つです。

関連する神々

シューを理解する上で重要なのは、彼の家族との関係です。創造神である父アトゥム（あるいはラー）から生命を受け継ぎ、配偶者である妹テフヌトと共に最初の世代神を成しました。そして、子供であるゲブとヌトを引き離すという創造的な行為によって、世界の基本的な構造を確立しました。このように、シューは創造の連鎖において中心的な役割を担う神と言えます。

シューは、大気の神として、天と地の間の空間を維持し、世界が崩壊しないように支える存在として、エジプト神話において不可欠な神格として崇敬されました。

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