ショックで直せ

トムとジェリー：ショックで直せ

1951年10月6日に公開されたカートゥーン『ショックで直せ』(Nit-witty Kitty)は、ウィリアム・ハンナとジョセフ・バーベラ監督による、人気シリーズ「トムとジェリー」の一編です。本作は、コミカルな展開と予測不能な結末で知られています。

物語は、台所でジェリーを追い詰めるトムから始まります。そこに現れたお手伝いさんが、箒でジェリーを叩こうとしますが、誤ってトムに強烈な一撃を加えてしまいます。この衝撃的な出来事が、物語全体を動かす重要なトリガーとなります。

箒で殴られたトムは、一時的に硬直した後、激しい身体的変化を起こします。彼の容姿は、なんとネズミのような姿へと変貌を遂げるのです。前歯が突き出し、ネズミのような仕草を見せるトムに、お手伝いさんは驚きを隠せません。

記憶喪失に陥ったトムは、性格も大きく変わってしまいます。普段は激しく憎んでいるはずのジェリーに親しみを覚え、チーズを美味しそうに食べ始めます。更には、ジェリーの巣穴に無理やり入り込み、彼のベッドを占領して眠り始める始末です。

この事態に、お手伝いさんは動物病院に電話をかけます。医師の説明によると、トムの奇妙な行動は、強い衝撃による記憶喪失（アムネジア）が原因とのこと。お手伝いさんは、トムの不可解な行動に振り回され、すっかり萎縮してしまいます。

一方、ジェリーにとっても、記憶喪失でネズミのような振る舞いをするトムは、大きな問題となります。トムに襲われなくなったのは幸いですが、この奇妙なトムは、もはやトムではありません。ジェリーは、トムを元の状態に戻すため、医学書を読み漁ります。そして、「頭に強い衝撃を与えると、記憶喪失が治る場合がある」という記述を見つけます。

ジェリーは、物陰からバットでトムを殴ろうとしますが、記憶喪失のトムは、驚くほど運が良く、ジェリーの攻撃をことごとくかわします。その後も、家中に様々な罠を仕掛けますが、効果はありません。一度はトムの頭をうまく打たせたものの、勢い余って二度も強打した結果、トムは再び記憶喪失に陥り、ジェリーの罠にかからなくなってしまうのです。

「ネズミ生活」を楽しむトムは、ジェリーに気さくにチーズを分け与えます。しかし、ウンザリしたジェリーはチーズを投げ捨てます。そのチーズのかけらが、壁に飾ってあった皿を転がし、皿は箒を倒し、箒がアイロン台に引っかかり、アイロン台が倒れるという、まるでドミノ倒しのような連鎖反応が起こります。

そして、ついにアイロン台がトムの頭に直撃。トムは頭を打ちつけながらも、いつもの精悍な表情を取り戻します。ネコとしての記憶が戻ったのです。ジェリーは、トムが記憶を取り戻したことを喜び、巣穴に逃げ込みながら、彼に熱いキスをします。

しかし、安堵も束の間。トムの背後から、バットを持ったお手伝いさんの姿が現れます。「頭を強く打つと記憶が戻るそうね…」と言いながら、彼女はバットを振りかざすのです。

結局、トムは再び記憶を失い、「大ネズミ」として、家とベッドをジェリーから乗っ取ってしまうのでした。

この作品には、トム、ジェリー、そしてお手伝いさんの3人が登場します。それぞれのキャラクターが、記憶喪失という予想外の出来事をきっかけに、コミカルでスリリングな展開を巻き起こします。特に、日本での放送では、お手伝いさんのセリフが版によって異なっていたり、白人として描かれていたりするなど、興味深い点も存在します。

『ショックで直せ』は、トムとジェリーの代表作の一つとして、現在も多くのファンに愛され続けています。その魅力は、予測不能な展開と、キャラクターたちの絶妙な掛け合い、そして時代を超えて受け継がれる普遍的なユーモアにあります。

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