ショージとタカオ

『ショージとタカオ』は、2010年に公開された日本のドキュメンタリー映画です。「ショージとタカオ」上映委員会の製作により、井手洋子が監督を務めました。この作品は、長年にわたり日本の司法制度における冤罪事件として議論されてきた「布川事件」において、殺人罪で有罪とされた元被告人である二人の男性、桜井昌司氏と杉山幸男氏の、仮釈放後の暮らしぶりと、自らの無実を証明するための再審請求活動の軌跡を、約15年間にわたって丹念に記録したものです。

映画製作の契機は、1994年に映像ディレクターであった井手洋子監督が、知人からの依頼を受け、布川事件の再審請求を支援する目的で開催されたイベント「壁の歌コンサート」の撮影に携わったことに始まります。このイベントを通じて、獄中から一貫して無罪を訴え続けていた桜井氏と杉山氏の存在を知り、深い関心を抱きました。そして、彼らがそれぞれ仮釈放された1996年11月12日（桜井氏）と11月14日（杉山氏）以降、彼らの日常の様子や、自らの名誉回復を目指して精力的に行われる再審請求に向けた様々な活動を、ビデオカメラで記録し始めます。

当初、井手監督の目的は、劇場での公開を前提とした映画製作ではなく、数ヶ月間程度の短い期間の記録をまとめてテレビ番組の企画として発表することでした。しかし、撮影を進めるうちに、二人の再審請求がどのような結論に至るのか、その過程を最後まで見届けることの重要性を感じ、結果的に撮影は長期にわたるものとなりました。約15年という歳月の中で、カメラは彼らが直面する困難や、支援者との絆、そして決して諦めない再審への強い意志を捉え続けます。

作品のナレーションは、監督自身が担当しており、その視点から物語が語られます。また、撮影には西尾清や藤江潔といった協力者も参加し、長期にわたる記録作業を支えました。

映画は、2010年10月9日に東京都港区の港勤労福祉会館で有料試写会が開催されたのを皮切りに、全国各地で地域上映が順次行われました。正式な劇場公開は、2011年3月19日から東京都新宿区のケイズシネマ、神奈川県横浜市中区の横浜ニューテアトルで始まり、以後、各地の映画館へと上映が広がっていきました。

本作はその内容と表現が高く評価され、多くの賞を受賞しています。特に、2011年2月12日に発表された「第84回キネマ旬報ベスト・テン」（2010年度作品対象）の文化映画部門では、第1位に選ばれました。また、2011年10月22日には、文化庁映画賞の大賞も受賞するなど、日本のドキュメンタリー映画史においても重要な位置を占める作品となっています。

布川事件という特定の事件を扱いながらも、日本の刑事司法制度における冤罪の問題、そして人間の尊厳と不屈の精神を描き出した本作は、多くの観客に深い問いかけを投げかけました。

もう一度検索