ショーン・ケリー

ショーン・ケリー：ロードレース界の伝説

ショーン・ケリー（Seán Kelly、1956年5月24日 - ）は、アイルランドが生んだ、ロードレース界における伝説的な存在です。1980年代にその名を轟かせ、数々の輝かしい記録を打ち立てました。特にクラシックレースでの強さは抜きんでており、史上最高のクラシックライダーの一人として、その名を深く刻んでいます。

1977年にプロとしてのキャリアをスタートさせ、1994年に引退するまでの間、彼はモニュメントで9回、プロレース全体では193回という驚異的な勝利数を記録しました。中でも、パリ〜ニースでは前人未到の7年連続総合優勝（1982年〜1988年）を達成。さらに、1989年にはUCIロードワールドカップで初代年間王者に輝き、1988年にはブエルタ・ア・エスパーニャで総合優勝を飾るなど、その実力はグランツールでも遺憾なく発揮されました。

その他にも、ジロ・ディ・ロンバルディア、ミラノ〜サンレモ、パリ〜ルーベ、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュといった、名高いクラシックレースで複数回の優勝を経験。クリテリウム・アンテルナシオナル、グランプリ・デ・ナシオン、ツール・ド・スイス、バスク一周、ボルタ・ア・カタルーニャといったステージレースでも、総合優勝を手にしています。

世界選手権自転車競技大会ロードレースでは、1982年と1989年に銅メダルを獲得。1987年には、同胞であるステファン・ロッシュが金メダルを獲得した際、自身も5位入賞を果たしています。1984年シーズンには、33勝という圧倒的な勝利数を記録し、同年3月に導入されたFICPランキングで初代1位に輝きました。その後、5年間首位をキープし続け、キャリア通算のランキングポイントでは、エディ・メルクスに次ぐ歴代2位という記録を保持しています。

輝かしいキャリアと実績

アイルランド出身のロード選手としては、1987年にジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、世界選手権の三冠を達成したステファン・ロッシュが広く知られています。しかし、ロッシュが圧倒的な輝きを放ったシーズンがほぼ1987年のみであったのに対し、ケリーは現役時代を通してコンスタントに勝利を重ね、数々の年間表彰を受けています。

特に、パリ〜ニースにおける1982年から1988年までの総合7連覇は、ステージレースにおける同一大会連覇記録として特筆に値します。同様の記録として、ランス・アームストロングがツール・ド・フランスで7連覇を達成しましたが、ドーピング問題により全成績が抹消されています。また、年間表彰制度であるスーパープレスティージュやUCI・ロードワールドランキングスにおいても、長らく1位を独占し、ベルナール・イノーやグレッグ・レモンといった強豪選手を寄せ付けませんでした。

当初はスプリンター型の選手として知られ、1982年のツール・ド・フランスでは、同タイプの強豪であったフレディ・マルテンスを大きく引き離し、ポイント賞（マイヨ・ヴェール）を獲得するなど、第一人者としての地位を確立しました。その後、オールラウンダー型の選手へと進化を遂げましたが、難易度の高い山岳コースを苦手としていたためか、グランツールでの総合優勝は、1988年のブエルタ・ア・エスパーニャのみとなっています。

モニュメント通算9勝を始めとするクラシックレースでは数多くの勝利を挙げましたが、ロンド・ファン・フラーンデレンだけは、2位が3度あるものの、遂に優勝を果たすことができませんでした。そのため、リック・ファン・ローイ、エディ・メルクス、ロジェ・デフラミンクに次ぐ、史上4人目のモニュメント完全制覇は達成できませんでした。

スプリント力が注目されがちですが、1992年のミラノ〜サンレモでは、モレノ・アルゼンティンが直前のレースでの事故を意識し、危険な下り坂で失速することを予測。ゴール手前の丘「ポッジョ・ディ・サンレモ」でのアタックをあえて放置し、下りで差を詰め、ゴール直前で差し切るという、心理・戦術面での巧みさを見せつけました。

ショーン・ケリーは、その圧倒的な実力と知略を兼ね備えた走りで、ロードレース史に名を刻む、不世出の英雄と言えるでしょう。

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