シライトソウ属

シライトソウ属

メランチウム科に属するシライトソウ属（学名：Chionographis、和名：シライトソウぞく、漢字表記：白糸草属）は、主に日本、朝鮮半島、中国といった東アジア地域に分布する多年草のグループです。過去の分類体系であるクロンキスト体系では、ユリ科に分類されていました。

特徴

シライトソウ属の植物は、地下に根茎を持つ多年草です。春から夏にかけて茎を立ち上げ、その先に穂状花序を伸ばします。花は白色で、穂に多数が密生してつきます。個々の花は左右相称という独特な形をしています。

花を構成する花被片は通常6枚です。このうち、上側に位置する4枚は非常に長く糸のように発達した線形となります。これに対し、下側に位置する2枚は短く、ほとんど目立ちません。まれに、長い花被片が3枚、短い花被片が3枚となる例外的な場合もあります。

雄蕊は6本あり、花糸は短く、先端についている葯はやや丸みを帯びた球形をしています。雌蕊は、子房が花被片よりも上にある上位子房で、球形をしており3つの部屋に分かれています。それぞれの部屋には2個の胚珠が含まれています。子房の先から伸びる花柱は浅く3つに裂け、その内側に柱頭があります。

受粉後に成熟した果実は蒴果となり、長さは3～4ミリメートル程度です。果実の中に含まれる種子は長楕円形をしています。

分布と日本の種

シライトソウ属は前述のように東アジアに分布し、特に日本では2～3種が確認されています。しかし、これらの種の多くは生育環境の悪化などにより個体数を減らし、環境省のレッドリストで絶滅危惧種に指定されています。主な日本産の種は以下の通りです。

アズマシライトソウ（Chionographis hisauchiana）：本州の関東地方に分布します。シライトソウの変種として扱われることもあり、環境省レッドリストでは絶滅危惧II類（VU）に指定されています。
クロヒメシライトソウ（Chionographis hisauchiana subsp. kurohimensis）：本州の日本海側、具体的には長野県、新潟県、秋田県に分布します。こちらもシライトソウの変種とされることがあり、絶滅危惧II類（VU）です。
ミノシライトソウ（Chionographis hisauchiana subsp. minoensis）：本州の岐阜県に分布します。シライトソウの変種とされる場合もあり、絶滅の危険性がより高い絶滅危惧IB類（EN）に指定されています。
シライトソウ（Chionographis japonica）：本州（秋田県以南）、四国、九州、そして朝鮮半島の南部に広く分布する本属の代表的な種です。
ヤクシマシライトソウ（Chionographis japonica var. yakusimensis）：鹿児島県の屋久島にのみ分布するシライトソウの変種です。絶滅危惧II類（VU）に指定されています。
チャボシライトソウ（Chionographis koidzumiana）：本州（愛知県、紀伊半島）、四国、九州に分布します。絶滅危惧II類（VU）に指定されています。
クロカミシライトソウ（Chionographis koidzumiana var. kurokamiana）：佐賀県に分布します。シライトソウの変種とされることもあり、絶滅の危機が極めて高い絶滅危惧IA類（CR）に指定されています。

海外の種

日本以外では、中国にも数種が分布しています。例えば、Chionographis chinensis や Chionographis merrilliana* といった種が知られています。

シライトソウ属の植物は、その独特な花の形態や限られた分布域、そして多くの種が絶滅の危機に瀕しているという現状から、生態学的な研究や保全活動における重要な対象となっています。

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