ユリ科

ユリ科（Liliaceae）とは

ユリ科は、単子葉植物に属する被子植物の一群です。かつてはユリやチューリップなど、地下に鱗茎や球根を持つ植物を多く含むグループとして知られていました。しかし、1998年に発表されたAPG植物分類体系の研究が進むにつれて、その範囲は大きく見直されることとなりました。

APG体系以前のユリ科

APG体系以前は、ネギ属やヤマノイモ属といった、現在ではクサスギカズラ目やヤマノイモ目に分類される植物もユリ科に含まれていました。そのため、非常に多種多様な植物を含む、広範なグループとして認識されていました。

APG体系による分類の変更

分子系統学の研究が進んだ結果、従来のユリ科は多系統群であり、少なくとも5つの系統に分けられることが判明しました。これにより、APG植物分類体系では、リュウゼツラン科など他の科も巻き込み、大幅な再編成が行われました。具体的には、ネギ科、ヒガンバナ科、クサスギカズラ科、ヒヤシンス科、キスゲ科、スズラン科、リュウゼツラン科などがクサスギカズラ目に、イヌサフラン科、狭義のユリ科などがユリ目に分類されることとなりました。

主な植物

ユリ: ユリ科の代表的な植物。
チューリップ: 園芸植物として非常に人気が高い。
カタクリ: 春の山野草として知られる。

APG体系でユリ科から除外された主な種

ユリ目

イヌサフラン: イヌサフラン科に分類。毒を持つ。

クサスギカズラ目

アスパラガス: クサスギカズラ科に分類。
マイヅルソウ: スズラン科に分類。
ナギイカダ: スズラン科に分類。
ヒヤシンス: ヒヤシンス科に分類。
スズラン: スズラン科に分類。
ネギ: ネギ科に分類。
ニラ: ネギ科に分類。
ニンニク: ネギ科に分類。
タマ[[ネギ]]: ネギ科に分類。
ラッキョウ: ネギ科に分類。
カンゾウ: キスゲ科に分類。甘草とは異なる植物。
ヤブラン: スズラン科に分類。

分類上の特徴と変遷

かつてユリ科に分類されていた植物は、花被片が6枚（外花被片3枚、内花被片3枚）、雄蕊が6本、子房上位であるといった特徴を持っていました。しかし、これらの特徴は単子葉植物の基本的な体制と共通するものであり、必ずしもユリ科特有のものではありませんでした。そのため、ユリ科は非常に多くの属と種を含む大きなグループでしたが、人為的な分類群であり、異質なものが混ざっているとの議論が長年ありました。

分類体系の変遷とともに、ユリ科は細分化される傾向にあります。クロンキスト体系では、アロエ科やサルトリイバラ科といったグループをユリ科から分離しましたが、一方でヒガンバナ科やキンバイザサ科をユリ科に含めていました。さらに、ダールグレンの分類体系では、種皮などの特徴からユリ目とクサスギカズラ目に大きく分け、それぞれを複数の科に分類しています。

近年の研究とAPG体系

近年の分子系統学の研究成果により、従来のユリ科が多系統群であることが明らかになりました。この結果に基づき、APG植物分類体系では、ユリ科はさらに細分化され、より自然な系統を反映した分類が行われるようになりました。これにより、かつてユリ科に分類されていた多くの植物は、ネギ科、ヒガンバナ科、クサスギカズラ科などの新しい科に属することとなりました。

主な属

以下に、クロンキスト体系でのユリ科に含まれていた主な属と、APG体系での分類群を示します。

サクライソウ目
オゼソウ属
オモダカ目
チシマゼキショウ属
ヤマノイモ目
ソクシンラン属
ノギラン属
キンコウカ属
ユリ目
ユリズイセン属
イヌサフラン属
チゴユリ属
グロリオサ属
サンダーソニア属
アマナ属
ボウィエア属
カロコルツス属
ウバユリ属
ツバメオモト属
カタクリ属
バイモ属
キバナノアマナ属
ユリ属
チシマアマナ属
メデオラ属
ノモカリス属
ノトリリオン属
プロサルテス属
タケシマラン属
ホトトギス属
チューリップ属
シライトソウ属
ヘロニアス属
ショウジョウバカマ属
キヌガサソウ属
メランチウム属
ツクバネソウ属
エンレイソウ属
シュロソウ属
リシリソウ属
クサスギカズラ目
ネギ属
ハナニラ属
ステゴビル属
ホンアマリリス属
クンシラン属
ハマオモト属
スノードロップ属
アマリリス属
ヒメノカリス属
ヒガンバナ属
スイセン属
ネリネ属
キバナタマスダレ属
タマスダレ属
アガパンサス属
クサスギカズラ属
オリヅルラン属
ギボウシ属
アフィランテス属
ヘスペロカリス属
ヒヤシンス属
ムスカリ属
ギカイソウ属
ツルボ属
カイソウ属
バラン属
スズラン属
エリオスペルマム属
ヤブラン属
マイヅルソウ属
ジャノヒゲ属
アマドコロ属
キチジョウソウ属
オモト属
ナギイカダ属
ユキザサ属
ベッセラ属
ブローメリア属
ブローディアエア属
ナガエアマナ属
トリテレイリア属
アステリア科
アステリア属
コロスペルムム属
ツルボラン科
アスフォデリン属
ツルボラン属
シャグマユリ属
キスゲ科
キキョウラン属
ワスレグサ属
ボリア科
アラニア属
ボリア属
キンバイザサ科
キンバイザサ属
コキンバイザサ属
アッツザクラ属
イキシオリリオン科
イキシオリリオン属
キセロネマ科
* キセロネマ属

このように、ユリ科は、近年の分子系統学の発展により、より自然な分類体系へと再編されました。かつてユリ科に属していた植物たちは、新たな科に属することになり、それぞれの系統がより明確に示されるようになりました。

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