クロンキスト体系

クロンキスト体系

クロンキスト体系（Cronquist system）は、1980年代にアーサー・クロンキストによって提唱された被子植物（花を持つ植物）の分類体系です。この体系は1990年代に登場したAPG体系が普及するまでは、最新の分類法とされていましたが、21世紀に入ると旧式のものとして扱われるようになりました。植物の分類は、時代と共にその方法論が変化してきたため、クロンキスト体系もその一環として理解されるべきです。

登場の背景

クロンキスト体系が生まれる前の植物分類の主流は、リンネの時代に始まった形態的手法に基づいていました。すなわち、見た目の特徴に基づいて植物が分類されていました。しかし、進化的な関係を考慮した系統学が支持されるようになり、植物分類学にも新たな視点が求められるようになりました。前時代の新エングラー体系では、単純な形態の花が原始的なものとされ、そこからより複雑な構造が進化したとされていました。このエングラー体系はそのシンプルなロジックから、市販の植物図鑑や教科書にも広く取り入れられていました。

ストロビロイド説

クロンキストは、ストロビロイド説を採用しました。この説は、植物の進化を単純な構造から始まったものとは考えず、むしろ花被やおしべ、めしべが軸の周りを螺旋状に配列する両性花を原始的な形態として位置付け、そこから様々な植物グループが進化したとするものです。この仮説では、単純な尾状花序群は、原始的な被子植物からの一部が退化して形成されたと見なされます。この体系においては、モクレンの仲間が最初に分類され、進化の過程を反映しています。逆に、進化の進んだ双子葉植物の中では、キクの仲間が最後に位置付けられています。このように、クロンキスト体系は多くの支持を集めましたが、被子植物に関する様々な学説が存在し、一つの体系に留まることはありませんでした。

クロンキスト以後の植物分類

1990年代に入ると、DNA分析を用いた分子系統学が急速に発展し、植物の分類も見直されることとなりました。特に、葉緑体DNAの分析による被子植物の進化の解明が進んでおり、その成果はAPG植物分類体系に集約されています。こうした新しいアプローチにより、従来のクロンキスト体系は依然として広範に利用されていますが、学術界ではAPG体系が主流となりつつあります。

クロンキスト体系による分類

クロンキスト体系では、モクレン門（被子植物門）Magnoliophytaの分類は以下のように整理されています。

• - モクレン綱（双子葉植物綱）Magnoliopsida

- モクレン亜綱 |Magnoliidae
- モクレン目 Magnoliales
- クスノキ目 Laurales
- コショウ目 Piperales
- その他の目...

• - ユリ綱（単子葉植物綱）Liliopsida

- オモダカ亜綱 Alismatidae
- オモダカ目 Alismatales
- ヤシ亜綱 Arecidae
- その他の目...

このように、クロンキスト体系は既存の分類法を反映しながらも、植物の進化を包括的に考慮した体系として理解されているのです。

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