シリア国民防衛隊

国民防衛隊（NDF）

国民防衛隊（NDF）は、シリア内戦の渦中で形成された民兵組織であり、その目的は親政府派の戦闘力を強化することです。2012年夏に設立され、シリア政府が実行したこの組織は、シリア軍の補完的な存在として、多様な地域のボランティアから成り立っています。特に、内戦の初期においては、国軍の士気が低下し、兵士脱走が多発していたため、NDFは歩兵戦の役割を担い、シリア軍のサポートを受ける形で行動しています。

NDFは地域に根ざした性格を持ち、阿拉ウィー派の村やドゥルーズ派の地域など、様々なバックグラウンドから構成員が集まっています。これらの地域では、家族や友人が反体制派によって害されることが多いため、多くの新兵が士気高く参加しています。また、NDFはイランの支援を受けており、イラン革命防衛隊（IRGC）やヒズボラからの訓練を通じて、戦術や都市戦の技術を習得しています。このため、NDFは地域の地勢を熟知した戦士たちで構成され、効果的な対反乱作戦を展開しています。

創設と発展

NDFの創設は2013年初頭にさかのぼります。当初は「人民委員会」に属していた民兵が、新たにNDFに組織され、職業化される形で再編成されました。政府の支払いと装備を受けることで、士気の高い地元部隊が形成されることが目指されました。特に、シャビーハ部隊から多くのメンバーがNDFに組み込まれ、その経験が生かされています。NDFは、地域住民の抵抗意識を捉え、強力な戦力として内戦に挑む役割を果たしています。

NDFは反体制派との接触を通じて、その戦術を洗練し、Aフリン地域などでの局地的紛争にも対応しています。2018年、NDFの大隊はトルコの侵攻に対抗すべく、アフリンを支援するために派遣されました。このような活動を通じて、国民防衛隊はその存在意義を確立しています。

組織と訓練

国民防衛隊は地域支部に分かれ、各支部は地元のクラチュンによって指揮されています。そのため、柔軟な運用が可能ですが、一方で統一性に欠けることも指摘されています。各都道府県の指揮官は、自主性を保ちながらも、全国調整官の監督下で行動しています。

特異な点として、2013年1月以来「国防の雌獅子」と呼ばれる女性部隊が存在し、約500人が訓練を受け、さまざまな武器を扱う能力を持っています。彼女たちも検問所を運営し、地域の保安上重要な役割を担っています。訓練は個別に行われ、内容は基礎戦闘から狙撃、偵察まで多岐にわたります。

まとめ

国民防衛隊は、シリア内戦という複雑な状況において、地域住民の士気を高め、政府側の戦闘力を強化する役割を持っています。その地域性や組織体制は、NDFを効率的な戦力として位置づけており、今後のシリア情勢にも影響を与える存在であると言えるでしょう。

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