シリア民主軍

シリア民主軍（SDF）

シリア民主軍（Syrian Democratic Forces, SDF）は、シリア内戦における反体制派の軍事組織であり、約40の異なるグループから構成されています。特に、クルド人民防衛隊（YPG）を中核として2015年に設立され、さまざまな民族や宗教的背景を持つ武装組織が共同で活動しています。これにより、この組織はクルド人だけでなくアラブ人やキリスト教徒も含む多様な構成を持っています。

概要

シリア内戦が始まった2011年以降、アサド政権に対抗する多様な反体制派が現れましたが、2015年10月にYPGを中心としたシリア民主軍が結成されました。この組織は、ISIL（イスラム国）との戦闘を主要目的としており、特にユーフラテス川以東での作戦を展開しています。また、アメリカからの支援を受けて空爆や武器の供給を受けていますが、そのために他の反体制派から反感を買うこともあります。

シリア民主軍は、以前の反政府勢力がアサド政権打倒を優先していたのとは異なり、ISILとの戦闘を第一の目標としています。このため、シリア政府軍と活動地域を分け合うことで、干渉や衝突を避けながら展開しています。

歴史的背景

アサド政権が短期的な崩壊を免れると、内戦は長期化し、反体制派の内部でも対立が生まれました。このような状況の中で、PYD（クルド民主統一党）が台頭し、彼らの軍事部門であるYPGがクルド人の多い地域を支配しました。政府は直接的な対決を避け、YPGはその地位を固めていきました。

2014年には、ISILの攻撃を受けたコバニでの戦闘（コバニ包囲戦）があり、YPGは国際的な支援を得て防御に成功しました。その勝利を受けて、彼らは更なる攻撃を行う基盤を築きました。

シリア民主軍が正式に結成される前、トルコ政府はPYDの影響を警戒していましたが、反体制派が様々な民族から成る必要があったため、彼らとの連携が求められました。このような背景の中で、シリア民主軍は公式に設立されました。

結成当初、シリア民主軍は5万人以上の兵力を有し、YPGやアラブの武装組織が参加していました。2015年頃から、SDFはISILとの戦闘で着実な成果を上げ、特にマンビジなどの都市を攻略しました。2016年には、トルコ軍との協同作戦「ユーフラテスの盾」が展開され、これによりISILはトルコ国境から排除されました。ただし、これに対してトルコ政府は警戒心を強め、アフリーンに対する攻撃を行うことになります。

現状と影響

2017年には、SDFがISILの「首都」ラッカを攻撃し、ラッカ陥落を果たしましたが、その後のデリゾールの争奪戦では政府軍に敗北を喫しました。また、アフリーン地域ではトルコの攻撃を受け、2018年に占領されています。これにより、シリア民主軍の活動や影響力は大きく変化しました。

シリア民主軍は、内戦の複雑な状況の中で生まれた政治的・軍事的な力として、今後も注目される存在であると言えます。

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