デリゾール

デリゾール：シリア北東部の要衝

デリゾールは、シリア北東部を流れるユーフラテス川南岸に位置する都市であり、デリゾール県の県都です。古くから交通の要衝として栄え、歴史、文化、そして現代の紛争が複雑に絡み合った重要な都市となっています。

地理と交通

デリゾールは、南北に伸びるダマスカスからハサカに至る街道と、東西に流れるユーフラテス川が交わる要所にあります。ラッカの下流に位置し、ジャズィーラ地方の主要都市として機能しています。空港と鉄道も整備されており、アレッポやトルコ国境に近いカーミシュリーと結ばれ、イラク北部やトルコ東部へのアクセスも容易です。このような地理的条件から、古くから交易の中心地として発展してきました。

経済

デリゾール周辺は肥沃な農業地帯であり、穀物栽培、綿花栽培、畜産が盛んです。特に、シリア砂漠での軽質原油の発見以降は、石油採掘産業の中心地としての役割も担っています。岩塩の採掘も行われています。さらに、ドゥラ・エウロポスやマリといった古代遺跡が近郊に存在し、観光資源としても注目されています。ユーフラテス川沿岸にはホテルやレストランが建ち並び、観光客を受け入れています。1930年にフランス人が建設したユーフラテス川を渡る吊り橋は、デリゾールの象徴的な景観の一つです。

教育と文化

デリゾールには県立博物館やアラブ文化センターなどの文化施設が整備されています。また、近年設立されたアル=フラート大学は、農学部、理学部、人文学部、教育学部、法学部、石油化学工学部、薬学部などを擁し、シリア北東部の高等教育を担っています。専門学校や技術学校なども存在し、教育面でも重要な役割を果たしています。

歴史

デリゾール周辺は、古代から多くの文明が栄えた地域です。近郊には、シュメールやアムル人の時代に栄えた都市国家マリの遺跡や、セレウコス朝やローマ帝国時代に繁栄したドゥラ・エウロポスの遺跡が存在します。この地域は、パルミラ帝国の女王ゼノビアによって支配された時期もありました。その後、サーサーン朝などによる支配や争奪が繰り返され、モンゴル帝国による侵略を経て荒廃しました。

オスマン帝国時代には、1857年にバグダード州からゾール県として分離され、1867年にデリゾール市が建設されました。第一次世界大戦中、アルメニア人虐殺において、多くのアルメニア人がこの地を通る死の行進で命を落としました。1990年には犠牲者を追悼する祈念碑が建立されました。

第一次世界大戦後、フランスの統治下となり、大きな駐屯地が置かれました。第二次世界大戦中には、イギリス軍とヴィシー政権側のフランス軍の間で戦闘が行われました。1946年にシリア独立後、デリゾールはシリアの県となりました。

2011年以降のシリア内戦では、アサド政権とISILとの間で激戦が繰り広げられ、デリゾール包囲戦と呼ばれる戦闘が続きました。2017年11月、シリア政府軍がデリゾール市を制圧したと発表しました。

著名な出身者

デリゾール出身の著名人には、サッカー選手のオマル・アッ＝ソーマや、ISILからデリゾールを守り抜いたとされるシリア軍人イサーム・ザフルッディーンなどがいます。

デリゾールは、古代からの歴史、豊かな資源、そして現代の紛争を経験した複雑な歴史を持つ都市です。その歴史と文化、そして未来に注目が集まっています。

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