シリーズ21

シリーズ21（近畿日本鉄道の通勤形電車）

シリーズ21（英語: Series-21）は、近畿日本鉄道（近鉄）が2000年から2008年の間に製造した通勤形の電車です。このシリーズは「人に優しい、地球に優しい」という理念を基に設計され、同時にコストの削減も意図された新世代の車両です。

開発背景

近鉄の一般車両は、1986年に登場した6400系から始まり、VVVFインバータ制御装置と前面貫通型のアルミニウム合金製車体のデザインが特徴でした。これらのデザインは1998年まで継続され、高い居住性と斬新な外見が利用者や鉄道ファンに支持されていました。しかし、2000年代の到来とともに、時代のニーズに応えるべく一般車両のフルモデルチェンジが決定されました。

新しい設計方針は以下の5つのポイントにまとめられています。
1. 高齢社会に配慮した「人にやさしい」車両
2. 環境負荷の少ない「地球にやさしい」車両
3. 製造や保守のコストを低減した車両
4. 鉄道職員が扱いやすい車両
5. 21世紀にふさわしいスタンダードな通勤車両

このコンセプトに則って生まれたシリーズ21は、近鉄の通勤形車両の標準型として位置付けられました。

車両の製造

シリーズ21の第一陣として、3220系が2000年3月15日に営業運転を開始しました。以後、5820系、9020系、9820系といった系列が様々な路線で導入されており、南大阪線には6820系が編成されました。ただし、阪神電気鉄道との相互直通運転のため、奈良線系統に多くの編成が投入されている一方、2024年2月時点では名古屋線系統において系列車両は未導入です。

6820系は、けいはんな線の開業に伴って導入された形式ですが、車体構造や台車の設計はシリーズ21とは異なります。しかし、内装や座席構造はシリーズ21に準じた設計になっています。

車体デザイン

シリーズ21では、アルミニウムダブルスキン構造を採用しており、車体は1986年の3200系以来のシルキーホワイトに新たに設定されたマルーンレッドのツートンカラーから、アースブラウンとクリスタルホワイトの組み合わせに変更されました。前面はブラックフェイスが施されています。

また、車両内部には5800系から受け継がれた明るいグレーを基調とした内装が採用されており、洗練された雰囲気を持つ車内が特徴です。乗降扉には複層ガラスが使用されており、車両の保温性も向上しました。

機械的な特性

走行機器は5800系までの仕様を基本にしつつ、新たにIGBT素子を導入しました。これにより、より高効率な運転が実現されています。なかでも、ブレーキ方式には電気指令式ブレーキを採用し、3220系を除く全車両には電磁直通ブレーキが装備されています。集電装置は各編成で異なる形式が混在しており、柔軟な運用が可能です。

運用状況

2021年4月時点での運用線区には、難波線、奈良線、京都線、橿原線、天理線などが含まれています。また、標準軌の5820系と9020系は、団体運用で志摩線に入ることがあります。
一方、名古屋線系統では定期営業運転は行われていないものの、5820系が展示車両として登場したこともあります。

結論

シリーズ21は、近鉄が21世紀に向けて発展させた通勤形電車であり、その人間工学的な設計と環境への配慮は、高齢社会においても重要な意義を持っています。
この車両の導入により、近鉄は鉄道運行においてさらなる利便性と快適性を追求し続けています。

もう一度検索