シルヴァン・カンブルラン

シルヴァン・カンブルラン（Sylvain Cambreling）は、1948年7月2日にフランスのアミアンで生まれました。彼は指揮者として、特にオペラと現代音楽の分野で世界的に高い評価を得ています。

カンブルランの音楽キャリアは、トロンボーン奏者として始まりました。パリ国立高等音楽院でこの楽器を専攻し、卒業後はリヨン国立管弦楽団などでトロンボーン奏者として活動していました。しかし、彼の才能は指揮へと向かいます。1975年、かつて奏者として所属したリヨン国立管弦楽団を指揮してデビューを果たし、同年にブザンソン国際青年指揮者コンクールで第1位を受賞し、指揮者としての道を確固たるものとしました。

指揮者として頭角を現したカンブルランは、ヨーロッパ各地の主要な歌劇場やオーケストラで活躍するようになります。1981年にはベルギー王立歌劇場の音楽総監督に就任し、当時の総裁ジェラール・モルティエと共に、革新的な演出家を積極的に起用してオペラ上演の新たな地平を開きました。この時期の経験は、彼のオペラ指揮者としての礎を築きました。

彼はまた、現代音楽の擁護者としても知られています。ピエール・ブーレーズが創設したアンサンブル・アンテルコンタンポランには度々客演し、20世紀後半から現代に至る多様な作品の演奏に取り組みました。この経験を通じて、複雑な現代作品に対する深い理解と演奏能力を培いました。

その後、カンブルランはフランクフルト歌劇場の音楽総監督を務めますが、劇場の財政的な困難に直面し、個人的な資金を投じてまで劇場の維持に努めたものの、最終的には辞任せざるを得ませんでした。しかし、彼の音楽への情熱は衰えることなく、南西ドイツ放送交響楽団（現在のバーデン＝バーデン・フライブルクSWR交響楽団）の首席指揮者に就任。このオーケストラでもドナウエッシンゲン音楽祭などを通じて現代音楽を積極的に紹介し、その演奏水準の向上に貢献しました。

長年にわたり、彼は旧知のジェラール・モルティエに招かれ、ルール・トリエンナーレやパリのオペラ・バスティーユといった重要な舞台にも客演し、オペラと現代音楽の両面でその手腕を発揮し続けました。

日本との関係も深く、2010年4月から2019年3月までの9年間、読売日本交響楽団の常任指揮者を務めました。この期間、彼は読響と共に数多くの意欲的なプログラムに取り組み、特にオペラ作品の演奏会形式での上演や、現代音楽の紹介に力を入れ、日本の聴衆に新たな音楽体験を提供しました。常任指揮者退任後も、2019年4月からは同楽団の桂冠指揮者として、引き続き読響との関係を保っています。

2012年からはドイツに戻り、シュトゥットガルト州立歌劇場の音楽総監督に就任し、再びオペラ界の要職を務めています。シルヴァン・カンブルランは、その幅広いレパートリー、特にオペラと現代音楽への深い造詣、そして強い信念に基づく音楽作りで、国際的な音楽界においてユニークな存在感を示し続けています。

もう一度検索