シロシビン

シロシビンとは

シロシビン（Psilocybin）は、マジックマッシュルームとして知られる特定の種類のキノコに含まれる天然の幻覚性物質です。化学的にはインドールアルカロイドの一種で、体内でシロシンという活性物質に変換され、脳内のセロトニン受容体に影響を与えます。

歴史

古代からメキシコやバリ島などでシャーマニズムの儀式に用いられてきました。1957年にアメリカの菌類学者ロバート・ゴードン・ワッソンがその存在を公にし、その後、アルバート・ホフマンによって有効成分であるシロシビンとシロシンが分離・特定されました。

性質

シロシビンは、化学的に安定したリン酸エステルであり、体内で加水分解されて活性型のシロシンに変換されます。シロシンは不安定で酸化されやすい性質を持ちますが、シロシビン自体は比較的安定しています。LSDと同様にセロトニンに類似した化学構造を持ち、熱に対して安定であるという特徴があります。

薬理作用

シロシビンは、主に脳内のセロトニン5-HT2A受容体に作用し、知覚の変化、感情の変容、思考の歪みなどを引き起こします。摂取後30分から1時間で効果が現れ始め、4〜8時間程度持続します。依存性は低いとされています。

心理的作用

シロシビンの摂取により、神秘的な体験、幸福感、一体感などが生じることがあります。研究によると、人格の開放性を高め、生活満足度を向上させる効果が確認されています。また、自然とのつながりを深め、権威主義的な見解を減少させる可能性も示唆されています。

医療用途

近年、シロシビンの精神疾患に対する治療効果が注目されています。治療抵抗性うつ病、がん患者の不安、強迫性障害、ニコチン依存症などに対する臨床試験が行われ、有望な結果が得られています。アメリカ食品医薬品局（FDA）は、シロシビンを「画期的治療薬」に指定し、その承認プロセスを迅速化しています。

法規制

シロシビンは、多くの国で規制薬物に指定されています。日本では、麻薬及び向精神薬取締法により、シロシンと共に厳しく規制されています。しかし、一部の国や地域では、医療目的や宗教的な使用を目的とした非犯罪化の動きが広がっています。

シロシビンを含むキノコ

シロシビンは、シビレタケ属、ヒカゲタケ属、アイゾメヒカゲタケ属などのキノコに含まれています。これらのキノコは、採取場所や時期によってシロシビンの含有量が異なり、中には毒性のある種類も存在するため、注意が必要です。

日本で規制対象となっている主な種類

ヒカゲシビレタケ
ミナミシビレタケ
アイセンボンタケ
ヤブシビレタケ
オオシビレタケ
アイゾメシバフタケ
シビレタケ
ワライタケ
ヒカゲタケ
センボンサイギョウガサ
* アイゾメヒカゲタケ

まとめ

シロシビンは、幻覚作用を持つ天然の化合物であり、その歴史は古く、近年では精神疾患に対する治療薬としての可能性が注目されています。一方で、法規制や安全性に関する注意も必要です。今後の研究によって、シロシビンの医療応用が進むことが期待されます。

もう一度検索