シンガポール日本人墓地公園

シンガポール日本人墓地公園

シンガポール日本人墓地公園は、シンガポール北東部のホウガン地区に位置する、日本人墓地と公園が併設された場所です。1891年に創設され、長きにわたりシンガポール在住の日本人の霊が眠る場所として、また、歴史を伝える場として、その役割を果たしてきました。

歴史

創設

1888年、シンガポールで事業を営んでいた二木多賀次郎が、困窮した日本人女性たちが粗末な場所に葬られているのを憂い、私有地のゴム園の一部を墓地として提供したのが始まりです。その後、1891年に渋谷銀治と中川菊三がシンガポール政庁に正式な墓地の設立を請願し、二木の土地と公有地を合わせた約8エーカーの墓地が誕生しました。この際、囚人墓地に埋葬されていた27名の日本人の遺骨も、この新しい墓地に移されました。二木はさらに私有地を寄付し、999年間の無料貸下げ許可を得ています。

管理

初期の墓地管理は二木多賀次郎が中心となって行っていましたが、1888年には無縁仏を管理する共済会が発足し、その後は有志や日本人会も管理に携わるようになりました。

御堂

墓地内には、当初釈教山西有寺という名前の御堂がありました。これは1893年に僧侶の楳仙和尚が建てた草庵が起源で、1911年に永平寺管主の日置黙仙和尚によって開堂式が行われました。現在の御堂は3代目で、無宗教の御堂となっています。

墓標数

公園内には910基の墓標があり、氏名が判明しているのは1,013柱です。内訳は、明治時代が309柱、大正時代が122柱、昭和時代が88柱、不明が494柱となっています。

二葉亭四迷の墓

ロシア文学者として知られる二葉亭四迷は、帰国途中に病没し、その遺骸は当地に埋葬されました。彼の墓は墓地の東北隅に位置しています。

戦時中

第二次世界大戦中、日本軍がシンガポールを占領すると、マレー作戦での戦没者を慰霊するための記念碑や石碑が多数建立されました。

主なものとして、以下のものがあります。

寺内寿一の墓: 1946年に病没した寺内寿一の墓碑。
日本軍作業隊の碑: 日本軍占領中に亡くなった軍人・軍属の遺骨が埋葬されています。終戦後の作業隊員の死亡者ではありません。
陸海軍人軍属留魂の碑: 戦没者を慰霊するための碑。
殉国烈士の碑: 殉職した人々を慰霊するための碑。
近歩5連隊の墓: マレー作戦で戦死した兵士たちの追悼碑。
戦犯受刑者の墓: チャンギ刑務所などで処刑された戦犯の遺骨の一部が埋葬されています。
ひのもと地蔵: 終戦後にジュロンで亡くなった日本人を慰霊する地蔵。

戦後

戦後、しばらくの間は日本人の入国が禁止されていたため、墓地は荒廃していました。しかし、1952年に日本総領事館が再開されると、館員と在留邦人が協力して清掃・管理を開始し、「日本人共同墓地管理委員会」が設立されました。この委員会を組織するために、1957年にシンガポール日本人会の前身となる「日本クラブ」が発足しました。

1974年にはシンガポール政府から墓地使用禁止命令が出されましたが、日本大使館とシンガポール日本人会の交渉により、墓地公園として保存されることになりました。

所在地

シンガポール・ホウガン地区、チュアン・ホウ・アベニューに位置しています。

寄付

シンガポール日本人会は、日本人墓地公園の維持・管理のために寄付を募っており、寄付者の名前はメモリアルプラザの銘版に記載されます。

この公園は、シンガポールにおける日本人の歴史と文化を伝える重要な場所として、現在も多くの人々に親しまれています。

脚注

シンガポール日本人会・史蹟史料部『戦前シンガポールの日本人社会-写真と記録 改訂版』シンガポール日本人会、2004年5月21日。
シンガポール日本人会「戦後の日本人の歩み‐シンガポール日本人会を中心に‐」『「南十字星」10周年記念復刻版―シンガポール日本人社会の歩み』、シンガポール日本人会、1978年3月、83-137頁。
篠崎, 護『シンガポール占領秘録―戦争とその人間像』原書房、1976年。

外部リンク

シンガポール日本人会 公式サイト
シンガポール日本人墓地映像

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