シンクロニシティー (アルバム)

シンクロニシティー（Synchronicity）

『シンクロニシティー』は、英国出身のロックバンド、ポリスが通算5枚目として制作したスタジオ録音アルバムである。1983年6月1日にA&Mレコードより世界に向けて発表された。本作は、ポリスにとって最後のスタジオアルバムとなった作品であり、その後のバンドの活動休止を決定づける重要な位置を占めている。

このアルバムは、ポリスのキャリアにおいて商業的にも批評的にも最大の成功を収めた作品と位置づけられている。特に、米音楽誌『ローリング・ストーン』が選定する「オールタイム・グレイテスト・アルバム500」では、159位にランクインするなど、後世においてもその評価は揺るぎない。また、グラミー賞においても最優秀ロック・グループ・パフォーマンス賞を受賞するなど、その音楽性が高く評価されたことを証明している。

しかしながら、本作の制作と発表の後、メンバー間の不和が決定的なものとなり、ポリスは事実上の活動停止へと至る。アルバムのタイトルである「シンクロニシティー（共時性）」とは対照的に、バンド内の調和は失われていった。

ジャケットデザイン

本作のジャケットデザインは、リリースされた国やメディアによって異なる複数のバージョンが存在する。イギリス盤や日本盤は単一のデザインが用いられているが、オリジナルのアメリカ盤では極めて多様なバリエーションが見られる。メンバーであるスティング、アンディ・サマーズ、スチュワート・コープランドのモノクロ写真の配置パターンに加え、背景の色彩（青、赤、黄の順列違い）、さらには金、銀、銅を用いたもの、色を全く用いないものなど、その種類は多岐にわたる。音楽専門誌『ゴールドマイン』の調査によれば、確認されているアメリカ盤のジャケットデザインは実に93種類にも上るという。

収録曲

アルバム『シンクロニシティー』に収録された楽曲は以下の通りである。特に記載のない楽曲は、ベーシスト兼ボーカリストのスティングによって作曲された。

A面

シンクロニシティーI (Synchronicity I) – 3:23
ウォーキング・イン・ユア・フットステップ (Walking in Your Footsteps) – 3:36
オー・マイ・ゴッド (O My God) – 4:02
マザー (Mother) - 3:05 (作曲: アンディ・サマーズ)
ミス・グラデンコ (Miss Gradenko) - 1:59 (作曲: スチュワート・コープランド)
シンクロニシティーII (Synchronicity II) – 5:02

B面

見つめていたい (Every Breath You Take) – 4:13
キング・オブ・ペイン (King of Pain) – 4:59
アラウンド・ユア・フィンガー (Wrapped Around Your Finger) – 5:13
サハラ砂漠でお茶を (Tea in the Sahara) – 4:19

ボーナストラック

* マーダー・バイ・ナンバーズ (Murder by Numbers) - 4:36 (作曲: スティング, アンディ・サマーズ)

特筆すべき楽曲

特に言及すべき楽曲がいくつか存在する。

見つめていたい (Every Breath You Take)

本作からのシングルカット曲であり、ポリスの楽曲の中で最も商業的に成功を収めた代表曲である。全世界で大ヒットを記録し、彼らの名を広く知らしめた。この楽曲の邦題は、フィル・コリンズが同時期に発表した「見つめて欲しい（Against All Odds）」と類似しているが、両者に直接的な音楽的関連性はない。ただし、1985年に開催された歴史的なチャリティイベント「ライブエイド」では、スティングとフィル・コリンズが共演を果たしているという興味深いエピソードがある。

マーダー・バイ・ナンバーズ (Murder by Numbers)

この楽曲は、オリジナルのアナログLP盤には収録されず、カセットテープ盤やCD盤といったメディアでのみ聴くことができたボーナストラックである。後年、スティングが1988年にフランク・ザッパのシカゴ公演にゲスト出演した際、この曲を披露しており、その時の演奏はザッパのライブアルバム『ブロードウェイ・ザ・ハード・ウェイ』に収められている。

日本国内盤

2006年に日本で再発売されたリマスター盤および紙ジャケット仕様盤は、エンハンスドCDとしてリリースされた。これにより、CDの音楽トラックに加え、コンピュータでアクセス可能なエンハンスド領域に、代表曲「見つめていたい」のミュージックビデオが特典コンテンツとして収録されている。

『シンクロニシティー』は、ポリスの芸術的な頂点を示すと同時に、バンドの終焉を告げる作品となった。その革新的なサウンドと普遍的な名曲の数々は、現在も多くのリスナーに愛され続けている。

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