シンシアのクリスマス

シンシアのクリスマス

『シンシアのクリスマス』は、日本のアイドル歌手、南沙織にとって初めてクリスマスをテーマに制作された企画盤です。1975年11月21日にCBSソニーから、当時のシングルレコードと同じEPサイズという形態でリリースされました。サブタイトルには「A Merry X'mas from Cynthia」と銘打たれており、ファンへのクリスマスプレゼントという意味合いも込められていたと考えられます。

この企画盤には、クリスマスシーズンを彩るおなじみのスタンダード・ナンバーが4曲収録されています。選曲の中心は定番のクリスマスソングですが、その中にはエルヴィス・プレスリーが歌ったことで広く知られる楽曲のカバーも含まれています。収録曲のうち「サンタが街にやってくる」は、原詞のまま英語で歌われている点が特徴的です。他の3曲は日本語詞で歌われています。

この作品は、南沙織の17枚目のシングル「ひとねむり」と同時期に発売されました。シングルのリリースと並行して、季節感を取り入れた企画アイテムを投入するという、当時のレコード業界の活発なプロモーション活動の一環であったと言えるでしょう。

収録曲は以下の通りです。

Side A
聖夜（きよし このよる）
作詞・作曲：F.Gruber、編曲：林哲司
サンタが街にやってくる
作詞：H.Gillespie、作曲：J.F.Coots、編曲：萩田光雄
Side B
ジングル・ベル
作詞・作曲：J.Pierpont、訳詞：音羽たかし、編曲：萩田光雄
ブルー・クリスマス
作詞・作曲：J.Johnson、訳詞：中里綴、編曲：林哲司

編曲は、林哲司氏と萩田光雄氏がそれぞれ2曲ずつ担当しており、日本のポップス界を牽引するアレンジャーによるサウンドも聴きどころの一つです。

『シンシアのクリスマス』は、発売以来、単独でのCD再発売は行われていません。しかし、南沙織のディスコグラフィを振り返る中で、その存在は重要な位置を占めています。企画盤に収録された全4曲が初めてデジタル音源化されたのは、2000年6月7日に発売された30周年記念のCD-BOX『CYNTHIA ANTHOLOGY』においてでした。このボックスセットに収録されたことで、多くのファンが改めてこのクリスマス作品に触れる機会を得ました。さらに、収録曲の一つである「ブルー・クリスマス」は、ソニーミュージックが運営する「Sony Music Shop」で現在も入手可能な6枚組CD-BOX『Cynthia Memories』にも収録されています。このため、アルバム全体をまとめて聴くには『CYNTHIA ANTHOLOGY』が必要ですが、「ブルー・クリスマス」に関しては比較的容易に聴くことが可能です。このように、単体での復刻はないものの、複数のコンピレーションを通じて楽曲が提供されている状況です。

この作品は、南沙織の音楽活動において季節性を取り入れた試みであり、1975年という時代の日本の音楽シーン、特にアイドルポップスにおける企画作品のあり方を示す資料とも言えます。また、エルヴィス・プレスリーに代表される海外の楽曲が、日本のアーティストによってどのようにカバーされ、日本語詞で歌われていたかを知る上でも興味深い例です。クリスマスの音楽というテーマと、70年代の日本のアイドルポップスという要素が組み合わさった、『シンシアのクリスマス』は、発表から時を経てもなお、そのユニークな存在感を放っています。

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