シンシナティ交響楽団

シンシナティ交響楽団

シンシナティ交響楽団（Cincinnati Symphony Orchestra）は、アメリカ合衆国最古のオーケストラの一つであり、音楽文化において重要な役割を果たしています。1893年にオハイオ州シンシナティで設立され、最初の演奏は1895年にパイクス歌劇場で行われました。設立当初は、ウィリアム・ハワード・タフト元大統領の夫人の支援を受けたシンシナティ管弦楽協会として活動をスタートさせました。

初代指揮者には、フランク・ヴァン・デア・ストゥッケンが任命され、彼は多くの国際的な音楽家を招いて演奏しました。特に、マーラーの交響曲第5番のアメリカ初演を行ったことは、シンシナティ交響楽団の名声を高めました。しかし、1907年には経済的な理由から一時解散を余儀なくされましたが、1909年に再結成され、レオポルド・ストコフスキーが首席指揮者に就任しました。ストコフスキーは、シンシナティ交響楽団で指揮者としてのキャリアをスタートさせ、その後の指導が楽団に大きな影響を与えることになりました。

ストコフスキーの後を継いだのはエルンスト・クンヴァルトやウジェーヌ・イザイで、いずれも重要な演奏を行いました。特筆すべきは、マーラーの交響曲第3番のアメリカ初演や、1917年の最初の録音などです。

1922年から1933年にかけて音楽監督を務めたフリッツ・ライナーの存在は、その後の楽団の発展において欠かせないものでした。彼の厳格な指導の下、シンシナティ交響楽団は演奏技術を磨き上げ、アメリカを代表する楽団の一つに成長しました。ライナーは、バルトークのピアノ協奏曲第1番のアメリカ初演を実施したほか、アンサンブルの質を向上させましたが、その厳しい指導により関係は険悪になり、楽団員はアメリカ初の音楽家たちの労働組合を結成するに至りました。

ライナー退任後、ユージン・グーセンスやソーア・ジョンソン、マックス・ルドルフといった指揮者がこの楽団を率い、安定した成長を遂げました。特にグーセンスはアーロン・コープランドに作曲を依頼し、《市民のためのファンファーレ》の世界初演を行いました。

1970年には若手指揮者トーマス・シッパーズが音楽監督に就任し、彼の努力で楽団はさらに発展しました。しかし、その在任期間中にシッパーズが急逝したため、楽団は新しい指揮者を必要とすることになりました。シッパーズ時代の1977年にはシンシナティ・ポップス・オーケストラが設立され、エリック・カンゼルが指揮者として迎えられました。

シンシナティ交響楽団は、その後もワルター・ジュスキント、ミヒャエル・ギーレン、ヘスス・ロペス＝コボス、パーヴォ・ヤルヴィ、ルイ・ラングレなどの著名な指揮者に指導され、2025年からはクリスティアン・マチェラルが音楽監督を務める予定です。この楽団は、近代音楽の発展に寄与し続けるとともに地域社会における音楽活動を支えています。

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