シークヮーサー

シークヮーサー：沖縄の恵みと健康の果実

概要

シークヮーサー（学名：Citrus × depressa）は、ミカン科の常緑低木で、日本の沖縄や台湾に自生する柑橘類です。沖縄の方言で「シー（酢）」と「クヮースン（食わせる）」を組み合わせた名称で、その酸味を物語っています。小粒ながら、強い酸味と独特の香りが特徴で、古くから沖縄の食文化に深く関わってきました。

特徴

シークヮーサーは高さ約5メートルに成長し、4月頃には直径約3センチの白い花を咲かせます。収穫期は7月頃からで、通常は果皮が緑色の未熟な状態で収穫されます。果実は温州ミカンを小型にしたような姿で、25～60グラムほどの大きさです。未熟果は酸味が非常に強いですが、完熟するとオレンジ色に色づき、甘みが増します。

様々な品種が存在し、イシクニブ、フスブタなど13～14種が確認されています。中でもクガニーは、熟すと果皮が黄金色になることから、沖縄の方言で「黄金」を意味する名称が付けられました。

シークヮーサーは、ノビレチンというフラボノイドを豊富に含むことで知られています。これは、台湾や東南アジアで栽培されている四季橘（カラマンシー）とは異なる重要な特徴です。四季橘はノビレチンをほとんど含まない一方、フロレチンを含有することが分かっています。

遺伝子と歴史

遺伝子解析の結果、シークヮーサーは琉球列島の在来種であるタニブター（C. ryukyuensis）と、中国原産のマンダリンオレンジ（C. reticulata）との交雑種であることが判明しました。その祖先には、わずかにザボンの遺伝子も含まれています。

シークヮーサーはクローン繁殖する性質を持っており、沖縄には古くから自生し、『おもろさうし』にも記述があることから、交配は自然に行われたと考えられています。様々な琉球ミカンの品種との交配を繰り返しながら、現在のシークヮーサーへと進化を遂げてきました。

利用方法

沖縄では、シークヮーサーの果汁はレモンの代用として、ジュースや料理の調味料、醤油に加えるなど幅広く活用されています。泡盛に絞り汁を加えて楽しむ習慣もあります。また、缶詰や瓶詰の果汁、シークヮーサーソーダ、シークヮーサー果汁入りの飲料など、様々な加工品が販売されています。

近年では、ノビレチンに含まれる健康効果が注目を集めており、抗がん作用、血糖値上昇抑制効果、抗認知症効果などが研究で報告されています。健康食品としての利用も拡大しています。

歴史的には、芭蕉布の加工にも利用されていました。未熟果の果汁で布を洗浄し、柔らかく仕上げるため、あるいはくたびれた布の再生に用いられていました。

表記について

シークヮーサーの表記は、沖縄方言由来のため、揺れが激しく統一されていません。「シークヮーサー」「シイクワシャー」「シークァーサー」など、様々な表記が見られます。日本果汁協会では「シークヮーサー」を標準表記としていますが、食品表示法や日本農林規格では「シイクワシャー」と定められています。

参考文献

島袋敬一『琉球列島維管束植物集覧【改訂版】』九州大学出版会、1997年10月

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