シーサー

シーサーの起源と役割

シーサーは沖縄県を中心に特有の伝説を持つ獣像であり、魔除けや守り神として崇められています。一般的には屋根の上に置かれることが多く、その特徴的な姿勢や表情から多くの人々に親しまれています。シーサーの名前は「獅子」とも関連があり、沖縄語で発音された形で伝わっています。言語的にはサンスクリット語の「シンハー」に由来し、八重山方言では「シィーシィー」や「シーシー」と呼ばれています。

このようなシーサーは、スフィンクスや中国の石獅子、さらに日本本土の狛犬と共通の起源を持ち、その系譜は古代オリエントのライオンにまでさかのぼると言われています。しかし、シーサーの起源については犬説もあり、地域ごとの文化や影響を受けた結果が反映されている事実も見受けられます。特に、中国南部や台湾では「風獅爺」や「風獅」と呼ばれる石像が風除けとして用いられ、これらも同様にシーサーと見なされることがあります。

シーサーの歴史

シーサーの最初の記録は1689年の文献『球陽』に見られています。この文献では、当時沖縄に多発していた火災を防ぐため、風水師が八重瀬岳に向けて獅子像を設置するよう住民に助言したと記されています。住民の設置によって火災が収束したというこの故事が、シーサーの起源神話となり、住民たちはシーサーの力を信じて育んできたのです。この最初のシーサーは現存しており、沖縄の文化遺産として大切にされています。

シーサーの形と設置

シーサーは、通常2体一対で設置されることが多く、これは仏教の影響を受けたものとも言われています。一般的に、口を開けたシーサーは雄で福を招く役割があり、口を閉じたシーサーは雌で災難を防ぐとされています。このように、雄雌の役割分担があるため、シーサーを設置する際には両者の位置や向きが重要視されます。しかし、雄と雌の違いについては様々な解釈が生じており、その定義が一意でないことも特徴です。

シーサーが家庭の屋根に置かれるようになったのは、明治以降の瓦葺きが一般的になった時期です。それ以前は、寺社や城の門、貴族の墓などの特別な場所に限られていました。シーサーの材質としては、伝統的には石や陶器が使われていましたが、現代ではコンクリートや青銅製も見られるようになり、さらに造形も多彩になっています。様々な表情や姿勢を持つシーサーは、地域や作り手によって異なるユニークな魅力を放っています。

現存するシーサー

沖縄本島南部では、「村落獅子」と呼ばれる特別なシーサーも見られます。また、2021年の時点で153体の村落獅子が現存しており、その活用方法も多岐にわたります。単体で設置される場合は火災から守る役割があり、複数設置される場合は魔除けの意味を持つことが多いです。時には、隣村との対抗意識から設置されたケースもあります。

特に注目すべきなのは、最古の記録が残るシーサーに関する事例です。特に、富盛地区のシーサーは沖縄県指定の有形文化財で、その高さは約1.4メートルにもなります。第二次世界大戦時、ここのシーサーは弾除けとして重要な役割を果たし、戦後もその姿を保っています。70年以上を経て少しずつ薄れつつある弾痕にも歴史が詰まっています。

シーサーは沖縄の人々にとって単なる守り神ではなく、その背景には深い地域の歴史と文化が息づいています。今日でも多くの家にシーサーが設置され、人々の生活に根付いているのです。

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