シーボーム・ラウントリー

ベンジャミン・シーボーム・ラウントリー

ベンジャミン・シーボーム・ラウントリー (Benjamin Seebohm Rowntree) は、1871年7月7日にイングランドのヨークで誕生し、1954年10月7日に亡くなった、著名な社会調査家、社会改革者、実業家である。彼は、特に貧困問題に関する実態調査を行ったことで知られ、1899年、1935年、1951年の3度にわたってヨーク市における貧困状況に関する調査を実施した。

生涯の概要

ラウントリーは、食料雑貨商として成功を収めた父ジョセフ・ラウントリーと母エマ・アントワネット・シーボームの次男として育った。若い頃は家庭教育を受け、その後ブーサム校に通った。1889年には家業のココア製造業に入社し、初の化学部門を立ち上げた。1897年には取締役に就任し、1923年から1941年までの間、同社の会長も務めた。彼は実業家としての立場から、高賃金を実現すべく、企業内福祉制度の充実に取り組んだ。

結婚相手は技術者の娘リディア・ポッターで、4男1女をもうけたが妻の死後はハイ・ウィカムにある歴史的な屋敷に住まい、そこで自身の生涯を閉じた。

業績

第一次ヨーク調査（1899年）

ラウントリーの社会調査活動の起点となったのは、ヨークにおける貧困層の生活状態を調査した1899年の取り組みである。この調査では、全ての労働者階級の世帯を対象にした全数調査を行い、11,560世帯、46,754人のデータを収集した。彼は調査結果をまとめた『Poverty, A Study of Town Life』を1901年に出版し、貧困線という概念を導入し、居住費、生活費、食費、衣服代などを基に貧困層の生活実態を分析した。特に、当時の社会における貧困の原因を単なる個人の責任として片付けることなく、低賃金が主な理由であると主張した点が注目を集めた。

第二次ヨーク調査（1935年）

1936年に発表された第二次調査『Poverty and Progress』では、前回の調査と同様の手法を取り入れた。この結果、絶対的貧困層が半減していたことが報告されているが、調査方法に変化があったため、データの直接比較はできなかった。この調査においても、貧困の原因は時代により変化しており、一次貧困の大部分が低賃金から失業へとシフトしていることが確認された。特に教育や健康への配慮が、貧困解消に寄与する可能性も指摘された。

第三次ヨーク調査（1951年）

1951年に発表された『Poverty and the Welfare State』は、ラウントリーのヨークにおける最終調査であり、絶対的貧困が重要な社会問題ではなくなりつつある状況を示した。福祉政策と経済成長が貧困の根絶に寄与しており、特に富の再分配が労働者階級の生活水準を向上させていると評価された。

その他の著作と影響

ラウントリーは多くの著作を残しており、彼の研究は特に自由党や労働党などの政策形成に大きな影響を与えた。1913年には農村の生活条件に関する調査結果をまとめた2つの著作を発表し、1920年代には労使関係や企業の経営についての考察も行った。彼はまた、産業福祉協会を設立し、経営者協会の設立にも参加するなど、社会福祉や労働者の権利向上に尽力した。

ラウントリーの影響は広範に及び、彼の提案は政策実現に向けた道筋を開き、貧困問題に対する見方を変える契機となった。彼の生涯を通じ、不平等や貧困に立ち向かう数々の活動が、後の社会の構築に寄与したことは間違いない。

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