シーポール級潜水艇

シーポール級潜水艇の概要

シーポール（Hai Ji、海极）級潜水艇は、中国が開発した深海探査艇であり、世界の海洋底の99.8%をカバーする水深7000mまでの潜水能力を有しています。この潜水艇は、研究用途と軍事用途の両面で使用されることが計画されており、2隻が建造されました。

設計と特徴

シーポール級潜水艇の設計は、中国船舶重工集団公司（CSIC）の第702研究所が担当しました。設計主任は、上海交通大学の徐芑南教授であり、彼は中国の他の多くの潜水艇や遠隔操作無人探査機も設計しています。また、崔維成と朱維慶も第一副設計者としてプロジェクトに貢献しています。

この潜水艇には、最大運用深度での様々な作業を可能にするため、左右に7自由度のマニピュレーターが2本装備されています。電力は、110kWhの容量を持つ酸化銀亜鉛蓄電池から供給されます。通信システムにはボトルネックがあり、データ伝送速度はわずか80kbpsと、通常のインターネット回線に比べて非常に遅く、カラー画像の伝送には約30秒かかります。

耐圧殻は、チタン合金製で、熱処理された2つの半球をTIG溶接で接合して製造されました。その厚さは76〜78mmで、完成時の直径の偏差は0.4%未満です。耐圧殻の試験は、ロシアの専門施設で行われ、通常の潜水深度よりも10%深い7700m相当の圧力に耐えることが確認されました。

観測窓は全て円錐状で、前面の観測窓は直径20cm、側面の観測窓は直径12cmです。この配置により、パイロットと科学者が同時に前方の観測窓から観察しながら操縦することが可能です。生命維持装置は、神舟6号宇宙船のものを基にしており、安全性を高めるために独立した酸素発生装置も搭載されています。船体は涙滴型で、尾翼はX字型に配置されています。推進装置はロシアのミール潜水艇の設計を取り入れており、4基の主推進装置、1基の水平推進器、そして側面の2基の推進器によって動作します。

シーポール1（Hai Ji Yi Hao, 海极一号）

シーポール1は、シーポール級の最初の潜水艇です。チタン製の耐圧殻はロシアで、マニピュレーターはアメリカで、浮力装置はイギリスで製造されました。2008年10月から試験が開始され、2009年に就役したと報告されています。試験は、研究船として改造された母船「大洋一号」と共に行われました。シーポール級は1人の運用者と2人の科学者が搭乗するように設計されていますが、シーポール1の試験では3人の運用者が搭乗しました。単価は約1億8000万元（約2500万ドル）です。

シーポール2（Hai Ji Er Hao, 海极二号）

シーポール2は、シーポール級の2番目の潜水艇であり、このクラスの最後の潜水艇となる可能性があります。非公式情報によると、シーポール1の製造契約には技術移転が含まれており、シーポール2の主要部品は中国のメーカーが技術移転で得た技術で製造されたとされています。シーポール2の最も重要な改良点は、光ファイバーの導入による通信容量の大幅な拡大です。シーポール1での試験経験から、専用の母船の必要性が認識され、「大洋二号」が建造されました。

仕様（シーポール1）

シーポール2の仕様はまだ公開されていませんが、シーポール1と大差ないと予想されます。シーポール1の主な仕様は以下の通りです。

全長: 8.2m
全幅: 3.0m
全高: 3.4m
耐圧殻の内径: 2.1m
重量: 空気中24トン
積載量: 220kg
最大速度: 2.5ノット
巡航速度: 1ノット
運用中止悪天候時: 海面状態4
乗員: 3名
運用時間: 12時間
最大運用深度: 7,000m
非逸脱深度: 7,100m
圧壊深度: 7,700m
* 生命維持時間: 3人×12時間

蛟竜級潜水艇

蛟竜（Jiao Long, 蛟龙）級潜水艇は、シーポール級を基に開発されましたが、中国政府は独自設計であると主張しています。設計はCSISの第702研究所が担当しました。蛟竜級はシーポール級よりもやや小型で、全長は8mです。外観上の主な違いは、支持そりの形状です。蛟竜級では、両側に小型のそりが2つずつ、計4つあります。推進装置もシーポール級とは異なり、船尾の推進器は同じですが、側面の小型推進器は、より大型の推進器2組に置き換えられました。これらの推進器は、フレームで保護されています。

蛟竜号は2012年6月24日に水深7020mに到達しました。

ハーモニー級潜水艇

ハーモニー（He Xie 和谐）級潜水艇は、シーポール級を基に開発され、蛟竜級潜水艇に類似しています。主な外観上の違いは、サーチライトの数です。ハーモニー級は、左舷と右舷に4台ずつ、合計8台のサーチライトを搭載し、観測窓の上には5台のサーチライトがあります。

配備と運用状況

シーポール級潜水艇は、現在、中国の研究船「向阳红9号」に配備されています。各潜水艇が専用の母船を持つためには、更なる建造や改造が必要です。中国の科学研究を確立するためには、専用の母船が必要とされ、「大洋2号」が指定されました。

しかし、予算不足により、計画は停滞しており、後続の潜水艇の作業は延期されています。シーポール1は、2009年9月20日に18回の試験潜水後、300mの潜水試験を完了し、10月初頭には水深1109mに到達しました。3000m潜水試験では、2010年7月9日に水深3757mに到達しました。予算が十分であれば、計画された潜水艇全てを運用できるとされています。

2012年6月15日、蛟竜号は水深6671mに到達し、日本の「しんかい6500」の記録を更新し、6月24日には7020mに到達しました。

関連項目

この潜水艇開発に関連する他の潜水艇や深海探査艇に関する情報もリスト化されています。

外部リンク

さらに詳しい情報へのリンクも提供されています。

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