ジェイムズ＝ヤンガー・ギャング

ジェイムズ＝ヤンガー・ギャング団：伝説のアウトロー集団

19世紀のアメリカ合衆国で、ジェイムズ＝ヤンガー・ギャング団は、その名を轟かせた無法者集団でした。特にジェシー・ジェイムズは、その悪名高さにおいて群を抜いていました。このギャング団は、ミズーリ州を中心に活動し、銀行強盗や列車強盗を繰り返しました。

メンバー構成と活動

ギャング団のメンバーは固定されておらず、数ヶ月の間隔で襲撃を繰り返す度に、参加メンバーが変動していました。主なメンバーとしては、ヤンガー兄弟（コール、ジム、ジョン、ボブ）とジェイムズ兄弟（ジェシー、フランク）、そしてクレル・ミラー、アーサー・マッコイ、チャーリー・ピッツ、ジョン・ジャレット、ビル・チャドウェル、マシュー・"エース"・ネルソンなどが名を連ねています。ジェイムズ兄弟とヤンガー兄弟は血縁関係にあると誤解されることがありましたが、実際には血縁的な繋がりはありませんでした。

1879年のギャング団解散後も、ジェイムズ兄弟は新たなメンバーを加え、犯罪行為を継続しました。エド・ミラー、フォード兄弟（ロバート、チャールズ）、ビル・ライアン、ディック・リディル、ハイト兄弟（ウッド、クラレンス）などがその例です。ギャング団は、ミズーリ州、ケンタッキー州、アイオワ州、テキサス州、アーカンソー州、カンザス州、ウェストバージニア州など広範囲にわたって活動し、銀行、列車、駅馬車を襲撃しました。

南北戦争との繋がり

ギャング団の起源は、南北戦争時の南軍ゲリラ部隊、いわゆるブッシュワッカーに遡ります。南北戦争はミズーリ州を二分し、激しいゲリラ戦が繰り広げられました。戦後、ブッシュワッカーたちは犯罪へと手を染めていきました。

1866年にギャング団の犯罪は始まったとされていますが、真にジェイムズ＝ヤンガー・ギャング団として組織化されたのは、1868年にケンタッキー州ラッセルビルの銀行強盗事件で、コール・ヤンガーとジェイムズ兄弟が当局に指名手配された時でした。

1876年、ミネソタ州ノースフィールドでの銀行強盗の失敗により、ヤンガー兄弟が逮捕され、ギャング団は解散しました。ジェシー・ジェイムズはその後、新たなギャング団を結成しましたが、1882年に背後から撃たれて死亡し、その生涯を終えました。

歴史的背景

南北戦争とミズーリ州

南北戦争が勃発すると、ミズーリ州は正式には北部に留まりましたが、開戦を煽る動きの中心地の一つとなり、北軍、南軍双方のゲリラが活動しました。1861年末には、北軍支持者と南部支持者が州全体で衝突し、ゲリラ戦が展開されました。1862年初頭には、北軍支持者の暫定政府が南軍ゲリラに対抗するため、州民兵隊を動員しました。これらの戦いは、アメリカ連合国の首都リッチモンドが陥落し、ロバート・E・リー将軍が降伏するまで続き、多くの命が失われ、広範囲にわたる農村地帯が荒廃しました。

南部ブッシュワッカーによる闘争は激化し、南北両軍による残虐行為が横行しました。北軍は裁判なしに容疑者を処刑したり、拷問したり、ゲリラ容疑者の家を焼き払ったりしました。一方、ブッシュワッカーは、北部支持者を処刑するなど、報復を行いました。

ジェイムズ兄弟とヤンガー兄弟は、奴隷所有の一家に属しており、ジェイムズ兄弟の母ゼレルダ・サミュエルは南部の支持を声高に叫び、一方、ヤンガー兄弟の父ヘンリー・ワシントン・ヤンガーは北部支持者と考えられていました。

ブッシュワッカーとしての活動

コール・ヤンガーがブッシュワッカーとして戦うことを決めたのは、北軍によって父親が殺害されたことがきっかけとされています。コール・ヤンガーとフランク・ジェイムズは、有名なブッシュワッカー指導者であるウィリアム・クラーク・クァントリルの下で戦ったと考えられています。一方、ジェシー・ジェイムズは16歳でゲリラ活動を始め、フランクと共にアーチー・クレメントや"ブラッディ・ビル"アンダーソンの指導下で戦いました。

終戦時、フランク・ジェイムズはケンタッキー州で降伏しましたが、ジェシー・ジェイムズは北軍民兵に降伏しようとした際に銃撃を受けました。その後、従妹のゼレルダ・ジー・ミムズに看護され、回復後に結婚しました。クァントリルとアンダーソンは戦死しましたが、ジェイムズ兄弟はゲリラ仲間との交流を続け、アーチー・クレメントの指導下で活動していました。

初期の犯罪活動 (1866年 - 1870年)

1866年2月13日、クレイ郡貯蓄協会が武装集団によって襲撃され、60,000ドル相当の現金と債券が盗まれました。これはアメリカ史上初の昼間の銀行強盗事件となりました。州当局は、アーチー・クレメントがこの襲撃を指揮したと疑い、懸賞金をかけました。容疑者には、フランク・ジェイムズ、コール・ヤンガー、ジョン・ジャレットなどが含まれていました。

その後も、クレメントのブッシュワッカー集団に関連する強盗事件が相次ぎました。1866年10月30日には、レキシントンのアレクサンダー・ミッチェル・アンド・カンパニーが襲撃され、2,011.50ドルの被害が出ました。クレメントはまた、選挙日に徒党を率いてレキシントンに侵入し、共和党の投票者を追い出して、同党の敗北を確実にしました。その後、州民兵隊が派遣され、クレメントは射殺されました。

クレメントの死後も、その追随者たちは結束を保ち、1867年5月22日にはリッチモンドで銀行を襲撃し、町長と警官2人が殺害されました。さらに1868年3月20日には、ケンタッキー州ラッセルビルでニムロッド・ロング銀行が襲撃されました。これらの事件の後、年長のブッシュワッカーが殺害されたり、逮捕されたりする中で、ジェイムズ兄弟とヤンガー兄弟が台頭し、ギャング団はジェイムズ＝ヤンガー・ギャング団へと変貌しました。

1869年12月7日、フランクとジェシーのジェイムズ兄弟は、ギャラティンのデイビース郡貯蓄協会を襲撃したとされています。ジェシーは、現金出納係のジョン・W・シーツを射殺したとされています。シーツは、南北戦争時にブラッディ・ビル・アンダーソンを殺害した北軍民兵士官と間違えられたとされています。この事件後、ジェイムズ兄弟は自警団に包囲されましたが、劇的な脱出を遂げ、ジェシーが書いた文書が新聞に掲載されたことで、ジェシーは一躍有名になりました。

1871年 - 1875年の活動

1871年6月3日、フランク・ジェイムズ、ジェシー・ジェイムズ、コール・ヤンガー、クレル・ミラーが、アイオワ州コリドンの銀行を襲撃しました。この事件をきっかけに、ピンカートン探偵社がギャング団の追跡に乗り出しました。アラン・ピンカートンは、息子のロバートを派遣し、郡保安官と協力してギャング団をミズーリ州シビルベンドの農園に追い詰めましたが、ギャング団は逃げおおせました。

1872年4月29日、ギャング団はケンタッキー州コロンビアの銀行を襲撃し、金庫を開けることを拒んだ現金出納係を射殺しました。同年9月23日には、カンザスシティ産業博覧会の切符売り場が襲撃され、900ドルが奪われました。この事件はヤンガー兄弟あるいはジェイムズ兄弟によるものではないとされています。ジェシーは手紙で関与を否定し、コール・ヤンガーは激怒しました。この事件は、「犯罪の騎士道」と題する記事で称賛されました。

1873年5月27日には、ミズーリ州セントジェネビーブの貯蓄協会が襲撃され、ギャング団は空に向かって発砲し、「万歳、ヒルデブランド！」と叫びながら逃走しました。同年7月21日、ギャング団は初めて列車強盗を働き、アイオワ州アデア近くでロックアイランド鉄道の機関車を脱線させました。この衝突で機関士が死亡し、ギャングは荷物専用車から2,337ドルを奪いました。

1873年11月23日、ジョン・ニューマン・エドワーズは、新聞でジェイムズ兄弟、ヤンガー兄弟、アーサー・マッコイを称賛する記事を掲載しました。この中で、ギャング団は南軍への忠誠心を強調しました。

1874年1月には、駅馬車強盗を働いたと疑われ、また後には、アーカンソー州で駅馬車強盗を働きました。1874年1月31日には、ミズーリ州ガズヒルでアイアンマウンテン鉄道を襲撃し、乗客からも金品を奪いました。

アダムズ・イクスプレス・カンパニーは、ピンカートン探偵社にギャング団の逮捕を依頼しました。1874年3月11日には、ジェイムズ兄弟を捜査していた探偵が射殺され、3月17日には、ヤンガー兄弟を追っていた探偵と保安官が、ヤンガー兄弟に射殺されました。これらの事件は、ミズーリ州の戦後最初の民主党知事であるサイラス・ウッドソンの悩みをさらに深めました。ウッドソンは、アイアンマウンテン強盗の犯人に高額な懸賞金をかけ、ギャング団の追跡に力を入れました。

1874年12月8日には、ギャング団がカンザス州マンシー近くでカンザス・パシフィック鉄道の列車を襲撃し、30,000ドルを奪いました。この事件で、ギャング団の新参者であったウィリアム・"バッド"・マクダニエルが逮捕され、逃走中に射殺されました。

1875年1月25日、ピンカートンのエージェントがジェイムズ農園を襲撃し、爆弾によってジェイムズ兄弟の母の右腕が吹き飛び、異母弟が死亡しました。この事件により、アラン・ピンカートンはジェイムズ＝ヤンガー・ギャング団の追跡を中止しました。同年9月7日には、ギャング団がウェストバージニア州ハンティントンで銀行を襲撃しましたが、メンバーの1人が殺害され、1人が逮捕されました。1875年には、ジェイムズ兄弟はテネシー州ナッシュビルに移動し、母を保護しようとしました。

1876年の活動と解散

1876年7月7日には、ジェイムズ＝ヤンガー・ギャング団がミズーリ州オッタービル近くで、ミズーリ・パシフィック鉄道を襲撃しました。しかし、この襲撃は、同年9月7日のミネソタ州ノースフィールド襲撃の舞台となりました。ノースフィールド襲撃は、ギャング団の活動範囲からかけ離れており、また、銀行も特別裕福ではありませんでした。しかし、ギャング団は、銀行に5万ドルを預けたという噂があったアデルバート・エイムズ将軍を標的にしていたと言われています。

襲撃当日、ギャング団のメンバーは、ノースフィールドの街に進入し、銀行を襲撃しました。しかし、住民は抵抗し、ギャング団のメンバーを殺害したり、負傷させたりしました。この襲撃で、銀行員も殺害されました。ノースフィールドの住民は、ギャング団の攻撃を撃退することに成功しました。この出来事は、「ジェシー・ジェームズ敗北の日」として毎年祝われています。

ノースフィールド襲撃後、ギャング団は、ミラーとスタイルズが殺害され、残りのメンバーも負傷した状態で、町から逃走しました。その後、追跡を逃れながら、数日間を過ごした後、ギャング団は分裂しました。ヤンガー兄弟とピッツは、徒歩で西に向かいましたが、沼地で追いつかれ、銃撃戦の末、ピッツが殺害され、ヤンガー兄弟は再び負傷しました。ヤンガー兄弟は降伏し、終身刑を宣告されました。

フランク・ジェイムズとジェシー・ジェイムズは、馬を確保して逃亡しましたが、この時点で悪名高いジェイムズ＝ヤンガー・ギャング団は終焉を迎えました。

その後

フランク・ジェイムズは、テネシー州ナッシュビルでジェシーと合流し、数年間を平和に暮らしました。しかし、ジェシーは犯罪に戻り、新たなギャング団を結成しました。1879年には、新たなメンバーを率いて列車を襲撃し、その後も駅馬車強盗や店舗襲撃などを繰り返しました。ジェシーの新たなギャング団は、1882年、メンバーであったフォード兄弟の裏切りによって、ジェシーが暗殺されたことで終焉を迎えました。フランクは、1882年、当局に出頭し、裁判で無罪となった後、1915年に亡くなりました。

ジェイムズ＝ヤンガー・ギャング団は、その大胆な犯行と、メンバーのカリスマ性によって、伝説的なアウトロー集団として、現在も語り継がれています。

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