ジェルメーヌ・ド・フォワ

ジェルメーヌ・ド・フォワ：激動の時代を生きた王妃の生涯

ジェルメーヌ・ド・フォワ（1488年 - 1538年）は、アラゴン王フェルナンド2世の2番目の妻として、アラゴン、シチリア、ナポリ、ナバラの王妃という称号を持ちました。フランス貴族フォワ伯家の出身であり、その生涯は政略結婚、王位継承、そして副王としての統治と、激動の時代を反映したものでした。

アラゴン王妃として

1504年、フェルナンド2世は最初の妻であるカスティーリャ女王イサベルを亡くし、後継者問題に直面していました。新たな男子をもうけるため、彼は1505年に異母姉レオノール（ナバラ女王）の孫にあたるジェルメーヌと再婚します。当時、フェルナンド2世は53歳、ジェルメーヌは17歳でした。

この結婚には、政治的な背景がありました。ジェルメーヌの叔父であるフランス王ルイ12世とフェルナンド2世は、ナポリ王国の支配を巡って争っていました。結婚は、両国の関係修復という目的も担っていたのです。

1509年、ジェルメーヌは息子フアンを出産しますが、彼はすぐに夭逝してしまいます。その後、フェルナンド2世との間に子供は生まれませんでした。

ナバラ王国の獲得

ジェルメーヌとの再婚は、ナバラ王国の獲得の口実にもなりました。ジェルメーヌの祖母レオノールはナバラ女王であり、父ジャン・ド・フォワもナバラ王位を要求して内乱を起こしたことがありました。1512年、ジャンの息子であるヌムール公ガストンが戦死すると、フェルナンド2世はナバラ侵攻を開始。翌1513年、ジェルメーヌの王位継承権を主張してナバラ王即位を宣言し、1515年に征服を完了させました。これにより、ジェルメーヌの従姉であるナバラ女王カタリナとその夫フアン3世はフランスへ逃れることとなりました。

副王として

1516年にフェルナンド2世が亡くなると、王位は孫であるカルロス1世（後の神聖ローマ皇帝カール5世）が継承します。カルロス1世は、若い義理の祖母であり、又従姉にあたるジェルメーヌとの間に私生児をもうけました。その後、ジェルメーヌはヨハン・フォン・ブランデンブルク＝アンスバッハと結婚し、1523年にカール5世によってバレンシア副王に任命されました。

1526年にヨハンが亡くなると、ジェルメーヌはカラブリア公フェルナンドと再婚。彼と共にバレンシア副王を務め、芸術と音楽の後援者として文化の発展に貢献しました。

1538年、ジェルメーヌは亡くなり、バレンシアの王立聖ミゲル修道院に埋葬されました。カラブリア公はその後も副王を務め、1550年に亡くなるまでその地位にありました。

ジェルメーヌ・ド・フォワは、政略結婚によって王妃となり、ナバラ王国の獲得という歴史的出来事に関わり、そして副王として文化の発展に貢献した、波乱万丈な生涯を送った女性でした。

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