副王

副王（ふくおう）

副王（スペイン語: virrey, ポルトガル語: vice-rei, 英語: viceroy）は、君主が直接統治できない植民地や属州を管理するために任命される官職です。この職は王の代理人として権限を持ち、重要な政治的決定を行う役割を担っています。

語源と関連語

副王の語源はラテン語にあり、接頭辞「vice-」（代理）と「rex」（王）から成り立っています。副王が統治する地域は副王領（virreinato、viceroyalty）と呼ばれ、女性の副王は副女王（vicereine）と称されます。また、時には副王夫人にも同様の呼称が使われます。副王の子息は英語で「viceigel」と表されます。

地位と役割

「副王」という称号は、ほかの官職、特に総督よりも上位であると認識されがちですが、実際には同程度の職制である場合もありました。副王が持つ権限は、必ずしもその領域の知事や副知事の上に立つというわけではありませんでした。副王という職が終身職ではない場合や名誉的に与えられることもあり、王位継承権を持つ者がこの職に就くことでその資質が試されることもありました。

スペイン帝国における副王

欧州の状況

1137年にはアラゴン王国とバルセロナ伯国が統合された際に、国王不在時に備えて副王が任命され、国家と国民を代表しました。16世紀に入ると、ハプスブルク朝の下で副王の制度は拡大し、その後、各地域の行政機関の一員としての役割を担うようになりました。そのため、アラゴン、バレンシア、カタルーニャなどの地域副王は、スペイン王によって任命され続けましたが、18世紀までには多くの副王制が消滅しました。

新大陸での副王

1492年、クリストファー・コロンブスは新大陸の副王にして総督という称号を授与され、コロンビア副王領が形成されました。スペインの征服者たちは新大陸に広がり、その統治機関を開発しました。1524年にはインディアス枢機会議が設立され、1529年には初代ヌエバ・エスパーニャ副王が任命されました。以後、ヌエバ・エスパーニャやペルーといった代表的な副王領が設立され、新大陸でのスペインの拡張を支える重要な役割を果たしました。こうした副王たちは、その地域で最高の権力を持ち、広範な統治を行いました。

大英帝国の副王

大英帝国においても副王が存在しました。1858年から1947年の間、インドの総督は公式には「副王」として呼ばれ、陸軍や行政の最高責任者としての役割を果たしました。特に、最後のインドの副王であるマウントバッテンは王室出身者であり、従来の副王とは異なる背景を持っていました。

ポルトガルの副王

ポルトガルでは、副王は特に重要な植民地に対し任命され、ゴアに本拠を持つポルトガル領インドでは1505年にフランシスコ・デ・アルメイダが初代副王に就任しました。このように、ポルトガルも副王制度を通じて植民地の管理を行いました。

その他の地域

副王の制度は他の国々にも見られます。例えば、フランスのヌーヴェル・フランス地域や、イタリアの植民地でも副王が存在しました。また、ロシアのロマノフ家統治下やオスマン帝国内でも、類似の地位や役割が認められることがありました。

まとめ

副王の制度は、さまざまな歴史と文化的背景を持つ地域で異なる形で運用されましたが、いずれも君主に代わって広範な権限を持ち、多くの人々に影響を及ぼす重要な役職であったことに変わりありません。この経緯は、植民地時代の政治的背景や権力構造を理解する上で欠かせない要素となっています。

もう一度検索