ジェローム・デイヴィス

ジェローム・ディーン・デイヴィス（1838年-1910年）は、アメリカ合衆国出身の軍人、宣教師、そして神学博士として知られる、日本近代化に多大な貢献を果たした人物です。J.D.デイヴィス、あるいはゼー・デー・デビスという表記も用いられることがありました。

ニューヨーク州グロートンに生まれたデイヴィスは、ベロイト大学在学中に勃発した南北戦争に北軍の義勇兵として参加。イリノイ歩兵第52連隊の旗手として従軍し、シャイローの戦いで武功を挙げ、中佐にまで昇進しました。戦争終結後、軍を離れてベロイト大学を卒業、シカゴ神学校で学び、牧師の資格を取得します。

当初はワイオミング州で開拓伝道に従事していましたが、やがて日本への伝道に強い関心を抱き、1871年12月、アメリカン・ボード宣教師として神戸に上陸。翌年には、D・C・グリーン宣教師や前田泰一らと共に宇治野村で英語学校を開設。多くの学生を集め、授業に先立ち聖書を教えるなど、教育活動に尽力しました。1873年2月、キリシタン禁制令の高札が撤去されキリスト教信仰の自由が保障されると、グリーンと共に元町四丁目に家を借り、キリスト教図書の書店とチャペルを兼ね備えた施設を運営しました。

その後、京都に移り、新島襄と共に同志社英学校（現・同志社大学）の創設に携わります。新島襄と共に学校の設立に尽力し、実質的な影の校長として学校運営の中核を担いました。1882年には母校ベロイト大学から神学博士の学位を授与されています。新島襄の死後には、1890年に英文で新島襄の伝記を著すなど、その功績を後世に伝える役割も果たしました。

デイヴィスは、女子教育にも尽力しました。1876年には、アメリカから女性宣教師アリス・スタークウェザーを招き、自身の京都の自宅で女子塾を開設。これは、今日の同志社女子大学の起源と言われています。彼の教育への情熱は、男女を問わず、多くの若者の人生に影響を与えました。

数多くの著作も残しています。主な著書には、『天地大原因論』、『基督教証拠論』、『新島襄先生之伝』などがあり、神学、キリスト教、教育など多岐にわたる分野で、その知識と見識を活かして執筆活動を行いました。これらの著作は、現在でも重要な史料として研究されています。

1910年、休暇で帰国中にオハイオ州オベリンで病に倒れ、永眠しました。彼の遺言「My Life is My Message（わが生涯はわが遺言なり）」は、同志社大学京田辺キャンパスのデイヴィス記念館（総合体育館）の正面ロビーに刻まれ、今もなお多くの人々に深い感銘を与え続けています。

デイヴィスの功績は、同志社大学のみならず、日本の近代化、キリスト教伝来、そして教育史においても重要な位置を占めています。軍人、宣教師、神学者、教育者、著述家として多様な顔を持つデイヴィスは、その生涯を通して、揺るぎない信仰と教育への情熱を貫き通しました。その生き様は、現代においても、多くの人々に示唆に富むものと言えるでしょう。彼の兄トマス・ジョサイア・デイヴィス、娘ジェネヴィーブ・デイヴィス・オールズ、甥ロバート・ヘンリー・デイヴィス、姪アンナ・Y・デイヴィスもアメリカン・ボードの宣教師として活躍した点も特筆に値します。特にロバート・ヘンリー・デイヴィスは新潟で宣教活動を行い、アンナ・Y・デイヴィスは同志社女学校で教鞭を執りました。これらの家族の活動も、日本におけるキリスト教の普及と教育の発展に貢献しました。

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