ジェームス・ナスミス

ジェームス・ナスミスの生涯と業績

ジェームス・ナスミス（James Hall Nasmyth）は、1808年8月19日にスコットランド・エディンバラで生まれました。彼の父親は著名な画家アレクサンダー・ナスミスで、裕福な家庭で育ちました。ナスミスには弟のパトリックと6人の姉妹もおり、皆が画家としての道を選びました。彼自身もエディンバラの高校を経て美術学校、さらに大学に進学し、幼少期から機械技術における興味を抱いていました。

15歳の時、ナスミスは自ら蒸気機関を作成し、休日には鋳物制作に取り組んだり、部品を調達するために店に通ったりしていました。1827年、彼が19歳の頃に地元で蒸気バスの導入計画が持ち上がると、ナスミスは8人乗りの蒸気バスを製作しました。これは彼の技術的才能を示す重要な出来事でした。

技術者としての道

ナスミスは自ら技術者としての道を志し、名高い技術者であるヘンリー・モーズリーの下で学ぶことを決意しました。ロンドンにあるモーズリーの工房に自作の蒸気機関を持参しましたが、弟子募集はすでに終了していました。それでもモーズリーはナスミスの能力を見込み、彼を助手として採用しました。ナスミスはモーズリーの下で約3年間修業した後、1836年に独立し、マンチェスター近郊のパトリクロフトに自らの工場を構えました。

この工場では、旋盤などの工作機械の改良に取り組み、1839年には鍛造加工用の蒸気ハンマーを発明します。この発明は彼のキャリアの中で最も重要なものであり、その後も杭打機や水圧パンチ、歯科用ドリル用のフレキシブルシャフトなど、多くの画期的な機器を設計しました。

ナスミスは自身の発明によって裕福になり、48歳で事業から引退しました。その後はケント州ペンシャーストに移り、天体観測に専念しました。ナスミスは望遠鏡を購入する代わりに、材料を調達し、自らの手で作り上げることを信条としていました。

彼の天文への情熱は深く、モーズリーとも天文ファンとしての共通の趣味を持っていました。モーズリーのために8インチまたは10インチの金属鏡を鋳造して研磨したこともありましたが、1831年にモーズリーが亡くなるまでの間、彼はニュートン式望遠鏡の制作に取り組んでいました。

ただし、20インチの望遠鏡を設計する際には、あまりの不便さから、自身の名前にちなんだナスミス式望遠鏡を発明するに至ります。この革新的な設計によって、観察者は高所に登る危険を避けながら天体観測を行えるようになりました。

ナスミスの業績は、蒸気機関の技術進化に貢献するだけでなく、天文学の発展にも寄与しました。彼の多才な才能と情熱は、技術と科学の交差点における重要な足跡を残し、後の世代にも影響を与えました。彼は1890年3月7日に亡くなりましたが、その功績は今もなお語り継がれています。

参考文献

• - ヴィトルト・リプチンスキ著、春日井晶子訳『ねじとねじ回し - この千年で最高の発明をめぐる物語』早川書房、2003年
• - Samuel Smiles編『James Nasmyth Engineer: An Autobiography』John Murray, 1912年
• - 吉田正太郎『天文アマチュアのための望遠鏡光学・反射編』誠文堂新光社 ISBN 4-416-28813-1

外部リンク

• - James Nasmythの作品（インターフェイスは英語）

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