ジェームズ・ガーディナー

ジェームズ・マクドナルド・ガーディナー（James McDonald Gardiner、1857年5月22日 - 1925年11月25日）は、アメリカ合衆国出身の建築家、教育者、そして宣教師として、日本の近代化に多大な貢献を果たしました。米国聖公会から派遣され、立教学校、立教大学校（現在の立教大学）において校長、教員を務める傍ら、建築家としても才能を発揮し、数々の重要な建物を設計しました。

生い立ちと教育

1857年、ミズーリ州セントルイスで生まれたガーディナーは、スコットランド系の両親の元で育ちました。1870年代にはニュージャージー州ハッケンサックへ移住し、ハッケンサック・アカデミーで大学進学のための予備教育を受けました。1875年にハーバード大学に入学しましたが、1877年に中退し、その後、ニューヨークの商社で経理の仕事に就きました。しかし、その傍らで米国聖公会内外伝道局の執事に選ばれ、海外伝道への強い志を持つようになります。

日本での活動

1880年、ガーディナーはチャニング・ウィリアムズの要請を受け、米国聖公会伝道局から築地の立教学校に派遣されることが決定しました。同年10月、横浜に到着し、立教学校の初代校長に就任。化学と英文学を教える傍ら、自ら設計した校舎の建設にも携わりました。1881年にはフローレンス・ピットマンと婚約し、翌年結婚。築地居留地に居を構え、夫婦で立教女学校の運営にも尽力しました。

ガーディナーは、1883年に立教大学校の校長に就任。教育者としての手腕を発揮する一方、建築家としての才能も開花させました。立教大学校の校舎群や聖堂の設計を手がけ、米国式カレッジの設立と運営に大きく貢献しました。また、大阪の英和学舎付属礼拝堂である聖テモテ教会の建築も担当し、その工事管理を通じて、建築教育を受けていない宣教師に建築技術を学ばせる試みも行いました。

1892年に立教学校長を退任してからは、建築家としての活動に専念しました。教会建築の代表作としては、京都の聖アグネス教会や京都聖ヨハネ教会（現在は博物館明治村に移設）が挙げられます。また、横浜に移築されている外交官の家など、邸宅の建築も多く手掛けました。彼の設計は、西洋の建築様式を取り入れつつも、日本の気候や風土に合わせた工夫が凝らされているのが特徴です。

建築家としての転身と耐震設計

1894年の明治東京地震で、自身の初期の作品が被害を受けたことを機に、ガーディナーは建物の耐震性を重視するようになりました。煉瓦造を基本としつつも、上層部には軽量の木材を使用するなど、独自の設計手法を確立しました。また、築地の自邸に地震計を設置し、観測を続けるなど、研究熱心な一面も持ち合わせていました。

多様な活動と晩年

ガーディナーは、建築家、教育者としての活動以外にも、東京演劇音楽協会や日本ハーバードクラブなどの設立に関わり、幅広い分野で活躍しました。1901年には、家族と共にアジア、中近東、ヨーロッパを経由して帰国し、その後、1903年にガーディナー建築事務所を開業。ミッション以外の仕事も積極的に手掛けるようになりました。1908年には米国聖公会伝道局を退職し、1910年には建築事務所を兼ねた自宅に移り、建築活動に専念しました。1923年の関東大震災では、築地の教会や学校の施設が甚大な被害を受けましたが、ガーディナー一家は日光に滞在していたため無事でした。

1925年、ガーディナーは聖路加病院で生涯を閉じました。彼の葬儀は立教大学で行われ、設計に携わった日光真光教会に埋葬されました。1926年には立教大学で記念礼拝式が行われ、彼の功績を称える銘板と肖像画が除幕されました。

ガーディナーの遺産

ジェームズ・マクドナルド・ガーディナーは、教育者、宣教師、そして建築家として、日本の近代化に大きな足跡を残しました。彼の建築作品は、今もなお、歴史的建造物として大切に保存されており、そのデザインは後世の建築家たちに大きな影響を与え続けています。また、立教大学の発展に尽力し、日本における米国式カレッジの基礎を築いたことは、彼の最も重要な功績の一つとして語り継がれています。

主な設計作品

築地居留地の校舎、聖堂、住宅
聖アグネス教会（京都）
京都聖ヨハネ教会（博物館明治村に移築）
外交官の家（横浜に移築）
その他、各地の教会や住宅

関連項目

立教大学
立教女学院

参考文献

松波秀子 「ジェームズ・マクドナルド・ガーディナーの人と作品 宣教師・教育者・建築家として」『近代文化の原点――築地居留地 Vol.1』
菅原涼子「J.M.ガーディナーと日光」『近代文化の原点――築地居留地 Vol.2』
菊池重郎「明治13年来日米人建築家J.M.ガーディナーの人と作品」『日本建築学会論文報告集』

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