ジェームズ・トムソン (工学者)

ジェームズ・トムソン（1822年2月16日 - 1892年5月8日）は、19世紀のイギリスを代表する工学者・物理学者であり、ケルヴィン卿として知られるウィリアム・トムソンの兄です。

生涯

ジェームズ・トムソンは、ベルファストで生まれ、青春期の多くをグラスゴーで過ごしました。父のジェームズ・トムソンも数学者で、グラスゴー大学で教授を務めていました。幼い頃からグラスゴー大学に通い、1839年に優秀な成績で卒業しました。卒業後は、グラスゴーで複数の技術者のもとで短期間の見習いを経験し、弟のウィリアムとともに理論的、数学的な工学研究に打ち込みました。20代後半には、水輸送の専門家として独立し、個人事業を始めました。

1855年には、クイーンズ大学ベルファストで土木工学の教授に就任しました。その後、1873年にウィリアム・ランキンの後任としてグラスゴー大学の土木・機械工学の欽定講座担当教授となり、1889年に視力の低下のため退任しました。彼は、1887年6月には王立協会のフェローにも選出されています。また、1884年から1886年まで、スコットランド工学造船学会の会長を務めるなど、学会活動にも積極的に参加しました。1892年、グラスゴーにて生涯を閉じました。

業績

ジェームズ・トムソンは、水車、揚水ポンプ、タービンの改良に関する業績で広く知られています。水力学の分野で重要な貢献をしただけでなく、復氷（圧力によって水の融点が下がる現象）の分析や、ジェームス・デイビッド・フォーブスの業績を発展させた氷河の移動を含む雪氷学の研究でも重要な役割を果たしました。また、同僚のトーマス・アンドルーズの研究を基に、熱力学の知識を用いて物質の液相と気相の連続性についての理解を深め、固相と液相の相境界についてのクラペイロンの式を簡略化した形に導き出しました。川の流体力学にも貢献しており、科学文献では、1884年に彼が「トルク」という用語を初めて英語に導入したとされています。

文献

ジェームズ・トムソンの主要な研究論文は、彼の死後、500ページに及ぶ論文集として再発行されました。この論文集には、80ページの長文伝記と10ページの短い伝記も含まれており、オンラインで閲覧可能です。この論文集では、「ラジアン」、「インターフェース」、「遠点」などの用語が初めて英語で使用されたことでも知られています。他にもいくつかの新語を考案しましたが、現代まで使われているものは一部に限られます。

ジェームズ・トムソンの業績は、工学、物理学、雪氷学など多岐にわたり、その影響は今日でも見ることができます。彼の研究は、理論的な洞察と実践的な応用を組み合わせたものであり、科学技術の発展に大きく貢献しました。特に、水力学、熱力学、雪氷学の分野における彼の貢献は、現在もその価値が認められています。

出典

Thomson, James (1822-1892). Dictionary of National Biography (英語). London: Smith, Elder & Co. 1885–1900.
Thomson, James (1912). Joseph Larmor & James Thomson. ed. Collected Papers in Physics and Engineering by James Thomson. Cambridge University Press. https://archive.org/details/collectedpapersi00thomrich

外部リンク

* Collected Papers in Physics and Engineering by James Thomson

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