ジキル博士とハイド氏 (1941年の映画)

1941年版『ジキル博士とハイド氏』：ハリウッド黄金期の重厚なドラマ

1941年公開のアメリカ映画『ジキル博士とハイド氏』は、ロバート・ルイス・スティーヴンソンの同名小説を原作とする、1931年版映画のリメイク作品です。1949年には日本で『ジェキル博士とハイド氏』の題名で公開されましたが、DVD発売時にはタイトルが変更されています。

本作は、数々の名作を世に送り出したMGM（メトロ・ゴールドウィン・メイヤー）によって製作され、監督には『風と共に去りぬ』『オズの魔法使』でも知られるヴィクター・フレミングが抜擢されました。プロデューサーはビクター・サヴィル、脚本はジョン・リー・メイヒンが担当し、音楽はフランツ・ワックスマンが手掛けました。撮影、美術、衣裳デザインといった制作陣も、ハリウッドを代表する才能豊かなスタッフが結集しています。

キャストには、スペンサー・トレイシー、イングリッド・バーグマン、ラナ・ターナーといった、ハリウッド黄金期を代表するスターたちが名を連ねています。スペンサー・トレイシーは主人公のジキル博士とハイド氏を一人二役で演じ、その圧倒的な演技力で観客を魅了します。イングリッド・バーグマンとラナ・ターナーは、それぞれジキル博士を取り巻く女性を演じ、物語に華を添えています。脇を固めるベテラン俳優陣の演技も、見どころの一つです。

映画のあらすじは、原作小説を踏襲しつつ、フレミング監督の手腕によって、よりドラマチックに展開します。ジキル博士は、人間の善と悪の二面性を研究する過程で、自らの内に潜む邪悪な人格ハイド氏を解き放ってしまいます。ハイド氏はジキル博士とは対照的な残忍な人格で、周囲の人々に災いを及ぼします。物語は、ジキル博士とハイド氏の葛藤、そして悲劇的な結末へと進んでいきます。ジキル博士は、ハイド氏の恐るべき本性を目の当たりにし、その存在に苦悩します。実験の過程で、ジキル博士はアイヴィーや養父であるチャールズ卿といった周囲の人間を危険にさらし、ついには悲劇的な結末を招くことになります。

本作は、1931年版と比較して、より洗練された映像表現、豪華なキャスト、そして美しい音楽が特徴です。特に、音楽は物語の雰囲気を効果的に高め、ドラマを盛り上げます。1931年版には音楽が使用されていなかったことと対照的です。アカデミー賞では、最優秀映画賞（白黒映画）、最優秀脚本賞、最優秀音楽賞の3部門にノミネートされ、その高い評価が証明されています。

興味深いエピソードとして、スペンサー・トレイシーは当初、バーグマンとターナーの役をキャサリン・ヘプバーンに演じて欲しかったとされています。また、ワーナー・ブラザースのアニメ作品『Hare Remover』では、バッグス・バニーが本作を称賛するシーンが登場します。さらに、ワーナー・ブラザースがMGM作品を管理するようになった現在では、1931年版と1941年版を収録した貴重なDVDが発売されています。このDVDには、バッグス・バニーを主役とする『ジキルとハイドとバッグス』も特典として収録されており、コレクターズアイテムとしても価値が高いと言えるでしょう。

1941年版『ジキル博士とハイド氏』は、ハリウッド黄金期の技術と才能が結集した、忘れ難い名作です。豪華なキャスト、洗練された演出、そして重厚なドラマは、現代においても多くの観客を魅了し続けています。

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