ジャイアント・ステップ/ディ・オール・フォークス・アット・ホーム

『ジャイアント・ステップ/ディ・オール・フォークス・アット・ホーム』：タジ・マハールの多様性を映し出す二面性

1969年、ブルース界の革新者であるタジ・マハールは、キャリア3作目となるスタジオ・アルバム『ジャイアント・ステップ/ディ・オール・フォークス・アット・ホーム』（原題：Giant Step/De Ole Folks at Home）をリリースしました。この作品は、そのユニークな構成と収録された音楽の多様性によって、彼のディスコグラフィの中でも特に重要な位置を占めています。

アルバムは元々、2枚組のLPとして発表されました。ディスク1にあたる『ジャイアント・ステップ』では、ジェシ・エド・デイヴィス（ギター、ピアノ、オルガン）、ゲイリー・ギルモア（ベース）、チャック・ブラックウェル（ドラムス）という優れたミュージシャンたちがタジ・マハールを強力にバックアップし、バンドとしてのダイナミックな演奏を展開しています。ここでは、ブルースを基盤としながらも、ロックやゴスペルなどの要素を取り入れた力強くグルーヴィーなサウンドが特徴です。

一方、ディスク2の『ディ・オール・フォークス・アット・ホーム』は、タジ・マハール自身によるアコースティックなソロ・パフォーマンス集となっています。ギター、バンジョー、ハーモニカなどを駆使し、素朴で温かみのあるブルース、フォーク、ラグタイム、さらには伝統的な労働歌などを情感豊かに歌い上げています。このディスクからは、彼の音楽的ルーツへの深い敬愛と、一人でも多くの楽器を操る卓越した才能が感じられます。バンドサウンドのディスクとソロ演奏のディスクを組み合わせることで、タジ・マハールの持つ幅広い音楽性と表現力が余すところなく示されています。

収録曲も多岐にわたります。注目すべきは、ディスク1に収録された「テイク・ア・ジャイアント・ステップ」です。これは、ソングライティングチームとして名高いキャロル・キングとジェリー・ゴフィンが作曲し、モンキーズがヒットさせたポップソングのカヴァーです。タジ・マハールは、ソロデビュー前、「ライジング・サンズ」名義で活動していた時期にもこの曲を録音していましたが、そのバージョンは長らくお蔵入りとなり、1992年になって初めて日の目を見ました。本作に収められたバージョンは、ブルースフィーリング溢れる独自の解釈で、原曲とは全く異なる魅力を持っています。

このアルバムは、商業的にもタジ・マハールのキャリアに大きな弾みを与えました。発表後、自身初となる全米アルバム・チャートのトップ100入りを果たし、1969年10月25日付のビルボード200で最高85位を記録しています。これは、彼の音楽がより多くの聴衆に受け入れられ始めたことの証と言えるでしょう。

また、本作に収録されたタジ・マハール作のオリジナル曲「ファーザー・オン・ダウン・ザ・ロード」は、後世のミュージシャンにも影響を与えました。特に有名なエピソードとして、ギタリストのエリック・クラプトンが2013年のアルバム『オールド・ソック』でこの曲をレゲエ・アレンジでカヴァーしたことが挙げられます。さらに特筆すべきは、そのクラプトンのバージョンに、タジ・マハール自身がゲストとして参加している点です。これは、長年にわたる二人の交流と、タジ・マハールの楽曲が持つ普遍的な魅力、そしてその影響力の大きさを示す美しい例と言えるでしょう。

アルバムの演奏には、タジ・マハール本人のボーカル、ハーモニカ、バンジョー、リゾネーター・ギターに加え、バンド・セクションとしてジェシ・エド・デイヴィス、ゲイリー・ギルモア、チャック・ブラックウェルが参加しています。彼らのタイトで安定感のある演奏は、ディスク1のバンドサウンドを支える重要な要素となっています。

『ジャイアント・ステップ/ディ・オール・フォークス・アット・ホーム』は、タジ・マハールの音楽的探求心と、ブルースを核としながらも多様なルーツ音楽を取り込む柔軟な姿勢が結実した作品です。力強いバンドサウンドと、パーソナルなソロ演奏という対照的な二つの側面を持つこのアルバムは、彼のアーティストとしての奥深さと才能を鮮やかに描き出しています。

以下にアルバムの収録曲を記載します。

ジャイアント・ステップ

- エイント・グワイン・ホイッスル・ディキシー
- テイク・ア・ジャイアント・ステップ
- ギヴ・ユア・ウーマン・ホワット・シー・ウォンツ
- グッド・モーニング・リトル・スクール・ガール
- ユア・ゴナ・ニード・サムバディ・オン・ユア・ボンド
- シックス・デイズ・オン・ザ・ロード
- ファーザー・オン・ダウン・ザ・ロード
- キープ・ユア・ハンズ・オフ・ハー
- ベーコン・ファット

ディ・オール・フォークス・アット・ホーム

- ライニン・トラック
- カントリー・ブルース#1
- ワイルド・オックス・モーン
- ライト・レイン・ブルース
- ア・リトル・ソウルフル・チューン
- キャンディ・マン
- クラック・オールド・ヘン
- カラード・アリストクラシー
- ブラインド・ボーイ・ラグ
- スタッガー・リー
- ケイジャン・チューン
- フィッシン・ブルース
- アニーズ・ラヴァー

参加ミュージシャン

- タジ・マハール: ボーカル、ハーモニカ、バンジョー、リゾネーター・ギター
- ジェシ・エド・デイヴィス: エレクトリック・ギター、アコースティック・ギター、ピアノ、オルガン
- ゲイリー・ギルモア: ベース
- チャック・ブラックウェル: ドラムス

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