オールド・ソック

2013年、エリック・クラプトンは自身の21作目となるスタジオアルバム『オールド・ソック』（英語: Old Sock）を発表した。この作品は、全編がカバー曲と書き下ろしの新曲で構成されており、クラプトンが新たに設立したインディーズレーベル「ブッシュブランチ・レコード」からの最初のリリースとして、彼のキャリアにおける独立した動きを象徴するものとなった。

アルバムは地域により異なるレーベルから販売され、アメリカではサーフドッグ・レコード、ヨーロッパではポリドール・レコードが担当した。特にアメリカでは、ピーター・トッシュの未発表カバーを含む全13曲を収めた限定メモリースティック付きデラックス版が少量生産された。収録曲のうち、「ゴッタ・ゲット・オーヴァー」と「エヴリ・リトル・シング」は新曲であり、プロデューサーのドイル・ブラムホールII、ジャスティン・スタンレー、ニッカ・コスタによって書かれた。カバー曲の選曲は、ブルース、フォーク、レゲエ、ジャズスタンダード、アメリカン・ソングブックなど、彼の幅広い音楽的ルーツを反映している。レコーディングには、ブラインド・フェイス時代の盟友スティーヴ・ウィンウッド、親交の深いJ・J・ケイル、ポール・マッカートニーといった旧知の豪華ゲストに加え、ウィリー・ウィークス、スティーヴ・ガッドら名うてのミュージシャンが多数参加し、円熟した演奏を披露している。

全12曲（限定版は13曲）を収録。タジ・マハールの「遠い道のり」やJ・J・ケイルの「エンジェル」といったルーツ色の濃い楽曲から、ジャズスタンダードの代表曲、レゲエのピーター・トッシュ「井戸が枯れるまで」、ブルースロックのゲイリー・ムーア「スティル・ゴット・ザ・ブルース」まで、ジャンルレスな選曲が特徴。テッド・ダファンやレッドベリーらの初期の楽曲、オーティス・レディングのソウルナンバーなども取り上げられている。これらに加え、本作のために用意された新曲2曲が収められている。クラプトン自身はボーカルのほか、様々な種類のギターやマンドリンなどで参加し、マルチプレイヤーとしての側面も披露している。

市場での受け入れは概ね良好であった。アメリカでは、総合チャートBillboard 200で最高7位、インディペンデント・アルバムチャートで首位を獲得。収録曲「エヴリ・リトル・シング」もアダルト・コンテンポラリー・チャートで26位となった。ドイツのアルバムチャートでも最高5位にランクインし、13週チャートインするヒットを記録した。批評家からの評価は大きく分かれた。オールミュージックは3.5/5点で「サウンドは清らか、選曲は思慮深い」と肯定的。ローリング・ストーン誌も3/5点を与え、「幅広いルーツ曲に新曲を加えた選曲は期待通り」と評した。対照的に、オブザーバー紙は1/5点と厳しく、「スティル・ゴット・ザ・ブルース」以外は「パブの奥より少しマシ」と評するなど、本作への評価は賛否が極端に分かれる結果となった。

『オールド・ソック』は、エリック・クラプトンが自身の音楽的根源を深く掘り下げ、多様なジャンルの楽曲を再解釈したカバーアルバムである。インディーズからのリリース、豪華ゲストとの共演、そして商業的成功と評論の賛否両論が相まった点で、彼のキャリアの中でユニークな位置を占める作品と言える。ベテランアーティストの円熟した演奏と、ルーツ音楽への深い敬愛が感じられる一枚となっている。

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