ジャイサルメール

ジャイサルメールは、インドのラージャスターン州に位置する都市で、「ゴールデンシティ」という愛称で知られています。この愛称は、夕日が沈む頃に街全体が金色に輝く様子に由来します。人口は約5万8千人（2001年時点）で、タール砂漠のほぼ中央に位置するオアシス都市です。毎年2月には、満月の3日間にわたって「砂漠祭り」が開催され、多くの観光客で賑わいます。

歴史

ジャイサルメールは、12世紀にバッティー・ラージプートのラーワル・ジャイサル王によって建設された城郭都市です。都市の名前は、建設者であるラーワル・ジャイサルの名前に由来しています。町の中心には、約7ヘクタールの台地状の丘があり、その上には城壁に囲まれた王宮がそびえ立っています。この城壁に囲まれたエリアが旧市街であり、東西約1キロメートル、南北約1.2キロメートルの範囲に広がっています。

ジャイサルメールは、インドから中央アジア、中東、エジプトへと続く主要な交易ルート上に位置していました。この戦略的な立地が、ジャイサルメールの繁栄に大きく貢献しました。この都市は、東西交易の中継地として栄え、高級シルクや香辛料などの交易品が、ラクダの背に乗せられてデリーやシンド地方（現在のパキスタン南部）へと運ばれました。キャラバン（貿易商隊）からの税収は、街の経済を支える重要な柱でした。また、ジャイサルメールは伝統的な手工芸品の製造の中心地でもあり、城砦の中には宮殿や寺院、城外には、ハーヴェリー（ラージプートの貴族や豪商たちの邸宅）、バザールなどが点在しています。丸い小石が敷き詰められた通りには、多くのお店が軒を連ねています。

しかし、海洋貿易の発達や鉄道の開通によって、キャラバンによる東西交易ルートが衰退すると、ジャイサルメールもその栄華を失い始めました。さらに、インドとパキスタンの分離独立によって交易ルートが分断されたことも、都市の衰退に拍車をかけました。その後、3度にわたる印パ戦争を経て、ジャイサルメールの戦略的・防衛上の重要性が増したため、インディラ・ガンディー運河が建設されました。さらに、ジャイサルメール盆地で250～300億立方メートルの天然ガスが発見されたことで、街は再び復興を遂げました。

世界遺産

2013年、第37回世界遺産委員会において、ジャイサルメール城を含むラージャスターン州の6つの城塞が「ラージャスターンの丘陵城塞群」としてユネスコの世界遺産に登録されました。ジャイサルメール城は、城壁で囲まれた旧市街にある小高い丘の上に築かれており、インド中世の街並みを今に伝える貴重な建造物です。城内には、7階建ての宮殿や12世紀から15世紀にかけて建設されたジャイナ教寺院、そして現在も人々が生活している家々が立ち並んでいます。

気候

ジャイサルメールで最も快適な気候となるのは、12月から2月です。この時期の平均最高気温は23度から28度程度で、夜間は砂漠の澄んだ空気が日中の熱を冷まし、気温は7度まで下がることもあります。3月から11月にかけては、日中の平均最高気温が30度を超える暑い日が続きます。特に5月から6月は40度を超える猛暑となるため、旅行の際には注意が必要です。

外部リンク

砂漠の都市・ジャイサルメル
ジャイサルメールの写真ツアー
ウィキボヤージュには、ジャイサルメール（ヒンディー語）に関する旅行情報があります。
ジャイサルメールに関連する地理データ - オープンストリートマップ

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