ジャガー・マークX/420G

ジャガー・マークX/420G：英国が生んだ大型高級セダン

ジャガー・マークXは、1961年からジャガー社が製造した、大型の高級4ドアセダンです。1966年には420Gへと名称変更されましたが、基本的な設計は変わらず、1970年まで生産が続けられました。その大きなボディと、伝統的な英国車の高級感を融合させたデザインは、当時としては異例であり、ジャガーの歴史において重要な位置を占めています。

マークX：アメリカ市場を意識した大胆なデザイン

マークXは、それまでのマークIXの後継モデルとして登場しました。当時の主要市場であったアメリカ市場の嗜好を反映し、ボディサイズは大幅に拡大されました。全長はマークIXと比較して11cm長く、全幅は8cm広くなり、特に1938mmの全幅は、1990年代にXJ220が登場するまでジャガー史上最大でした。

この巨大なボディは、乗り降り時のドアの開閉を容易にするため、補助スプリングが組み込まれるほどです。一方、全高は22cm低く抑えられ、1960年代らしい近代的なデザインと、ジャガーならではの優雅さを両立させていました。特徴的な4灯式ヘッドライトは、後のXJシリーズにも受け継がれるデザイン要素となりました。

室内は、贅沢なウッド製のダッシュボードが採用され、オプションでウッド製のピクニックテーブルまで装着可能でした。これは、ソフトパッドが不要だった時代の高級車ならではの、クラシカルな雰囲気を醸し出しています。

機構面では、ジャガーの4ドア車として初めて四輪独立懸架を採用しました。このシステムは、同時期に登場したEタイプにも採用され、XJ-Sまで受け継がれ、ジャガー車の走行性能向上に大きく貢献しました。パワフルな直列6気筒XKエンジンは、1948年以来の実績を誇り、高性能と高出力を両立させていました。初期は3781ccでしたが、1964年には4235ccに拡大されました。トランスミッションは4速MT、オーバードライブ付きMT、ボルグワーナー製ATが選択可能で、ATの場合はコラムシフトでした。パワーステアリングは標準装備で、4.2Lモデルでは可変ギアレシオ型に改良されています。

420G：マイナーチェンジとロングホイールベースモデル

1966年10月、マークXは420Gへと名称変更されました。外観上の変更は、フロントグリルとサイドモール、ターンシグナルランプの追加程度でしたが、内装はダッシュボードにソフトパッドが追加され、一部素材が合成皮革に変更、時計の位置変更、エアコンの装備などが行われました。

また、420Gでは、前席ベンチシートとパーティションガラスを装備したロングホイールベース（LWB）モデルも追加され、略式リムジンとしての利用も可能になりました。420Gは、後継モデルのXJ6が登場した後も1970年まで生産が続けられましたが、生産台数はマークXと比べて少なくなりました。

ジャガーの歴史に刻まれた名車

マークX/420Gは、アメリカ市場をターゲットにした大胆なボディサイズ、ジャガーらしい優雅なデザイン、そして当時の最先端技術を融合した、英国を代表する高級セダンでした。その存在感は、後のジャガーモデルにも大きな影響を与え、現在でも多くの愛好家から高い評価を受けています。日本でも輸入され、著名人にも愛用者がいたことは、その人気を物語っています。デイムラー・DS420リムジンはマークXのプラットフォームを採用した派生モデルで、マークX/420Gの生産終了後も1992年まで生産されました。

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