ジャガー・Mk1/Mk2

ジャガーMk1/Mk2：英国が生んだ高性能小型サルーンの歴史

ジャガーMk1/Mk2は、1956年から1969年にかけてジャガーが生産した小型サルーンです。第二次世界大戦後、スポーツカーや大型サルーンに注力していたジャガーにとって、Mk1/Mk2は新たな市場開拓に向けた挑戦でした。その挑戦は成功を収め、高性能で洗練されたデザインは多くの人々を魅了しました。本稿では、Mk1、Mk2、そして後継モデルである240/340について、その歴史と特徴を詳細に解説します。

ジャガーの新たな挑戦：Mk1の誕生

1956年、ジャガーは新たな市場セグメントへの参入を目指し、「2.4サルーン」を発売しました。これはジャガーにとって初のモノコックボディを採用したモデルであり、XKエンジンのショートストローク版を搭載。最高出力112hpを誇り、当時の小型サルーンとしては高い性能を備えていました。

特徴的なのは、強度確保のため非常に太い窓枠を採用していた点です。これは後継モデルであるMk2と区別する重要なポイントとなります。ボディサイズは全長4,590mm、全幅1,700mm、全高1,460mmとコンパクトに設計され、車両重量も1,270kgに抑えられていました。サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン＋トーションバー、リアはトレーリングリンク＋ラディアスアーム＋リーフスプリングという構成で、フロントとリアのトレッド幅が異なる珍しい設計でした。

1957年には、XK140用のエンジンを搭載した「3.4サルーン」が追加されました。最高出力210hp、最高速度193km/hを達成し、高性能スポーツセダンとしての地位を確立しました。このモデルから3速ATがオプション設定され、後に2.4サルーンにもATが導入されました。また、3.4サルーンの登場を機に、フロントサスペンションの強化やディスクブレーキのオプション設定、ラジエーターの大型化などが行われました。

洗練されたデザインと高性能：Mk2の登場

1959年、Mk1の後継モデルとしてMk2が登場しました。Mk1と比べて外観上の変化は少ないものの、メカニズム面では大幅な進化を遂げていました。

まず、目を引くのが細くなったクロームメッキの窓枠と、リアタイヤを覆うスパッツ、バンパーのオーバーライダーです。これにより、視覚的な開放感と洗練された印象が与えられています。内装もシートやダッシュボードのデザインが変更され、メッキパーツの増加により豪華さが増しました。

エンジンラインナップには、ジャガー・マークIXに搭載されていた3,781ccのXKエンジンが追加され、「3.8サルーン」としてラインナップに加わりました。最高出力220hp、最高速度201km/hを達成し、0-60mph加速も8.8秒と、当時の小型セダンとしては驚異的な性能でした。2.4サルーンと3.4サルーンのエンジンも改良され、出力向上を果たしています。また、3.8サルーンには四輪ディスクブレーキが標準装備となり、他のモデルでもオプションとして選択可能になりました。リアトレッドも広げられ、走行安定性も向上しています。

Mk2は1960年にジャガーがデイムラーを買収したことを受け、1962年にはデイムラー製V型8気筒エンジンを搭載した「デイムラー・2½V8サルーン」が発売されました。1965年にはフルシンクロの4速MTが採用され、1967年にはパワーステアリングも追加されました。しかし、1966年頃からは販売台数が減少傾向となり、コスト削減のためレザーシートがビニール製に変更されたり、フォグランプが廃止されたりするなど、簡略化が図られました。

コストダウンとモデルチェンジ：240/340

1967年、経営上の理由からコスト削減を迫られたジャガーは、Mk2の後継モデルとして「240/340」を発売しました。3.8リットルエンジンは廃止されましたが、ヘッド形状の見直しにより、2.4リットルモデルの240は最高出力133hpに向上しました。3.4リットルモデルの340も、最高出力は従来通りですが、0-80km/h加速が大幅に向上しています。外見上はバンパーとホイールキャップのデザインが変更され、内装ではレザーがビニールに変更されました。このモデルチェンジに伴い、デイムラー・2½V8サルーンも「V8 250」にモデルチェンジしています。

ジャガーMk1/Mk2は、ジャガーの歴史において重要なモデルであり、その高い性能と洗練されたデザインは、後のモデルにも大きな影響を与えました。コンパクトなボディに高性能エンジンを搭載したそのコンセプトは、現代のスポーツセダンにも受け継がれています。また、光岡ビュートなど、現在でもそのデザインがモチーフとして使用されるなど、その存在感は今もなお輝き続けています。

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