ジャガー・XJR-16

ジャガーXJR-16：IMSA GT選手権を席巻した名車

1991年、アメリカのIMSA GT選手権を舞台に、トム・ウォーキンショー・レーシング（TWR）によって開発されたジャガーXJR-16は、その圧倒的なパフォーマンスで多くの観客を魅了しました。このマシンは、TWRが同選手権で1989年から投入していたXJR-10をベースに開発された、いわば進化の到達点と言える一台です。

当初はXJR-10の改良版として「XJR-10F」の名称でデビューする予定でしたが、その改良の度合いが非常に大きかったことから、XJR-16という新たな名称が与えられました。カーボン製のモノコックや3.0Lターボエンジンといった基本構造はXJR-10を踏襲しつつも、多くの点で大幅な進化を遂げています。

最も顕著な改良点は、エンジンマネージメントシステム、ブレーキシステム、そして空力デバイスにあります。具体的には、エンジンマネージメントシステムをザイテック製からボッシュ・モトロニックMP1.7へと変更。これによりエンジンの制御精度が向上し、より高いパフォーマンスを引き出すことが可能となりました。さらに、ブレーキローターを従来のスチール製からカーボン製に変更することで、ブレーキ性能の大幅な向上を実現しています。

そして、空力デバイスにも大きな変更が加えられました。XJR-14を思わせる大型の二段式リヤウイングを採用することで、高速走行時の安定性とダウンフォースの大幅な向上が図られました。これらの改良により、XJR-16はXJR-10を凌駕する高い戦闘力を獲得したのです。

1991年シーズン、XJR-16はIMSA選手権で鮮烈なデビューを飾ります。第5戦ロードアトランタでは、ポールポジションからスタートしてそのまま優勝。続く第6戦トペカでも、ポールポジションから2位と、その高いポテンシャルを証明しました。第7戦ライムロックからは、TWRは2台体制でXJR-16を投入し、その圧倒的な速さでレースを席巻しました。

シーズンを通して、XJR-10とXJR-16を合わせて6勝を挙げ、これはIMSA-GTPクラスに参戦したメーカーの中で最多勝利数となりました。しかしながら、ポイントの取りこぼしも多く、惜しくもマニュファクチャラーズ、ドライバーズ両タイトルは、安定した成績を残した日産に奪われてしまいました。

1992年シーズンは、IMSAシリーズの開幕戦であるデイトナ24時間レースにのみ参戦。ポールポジション獲得によるボーナスポイント獲得を狙ってエントリーしましたが、予選では2位に終わり、決勝レースではウォームアップラン中にエンジントラブルが発生したため、残念ながら出走を取り消しました。

ジャガーXJR-16は、その短い参戦期間にもかかわらず、数々の伝説を残した名車と言えるでしょう。その革新的な技術と圧倒的なパフォーマンスは、今もなお多くのモータースポーツファンを魅了し続けています。

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