ジャガー・XJR-7

ジャガーXJR-7：IMSA GTP選手権を彩った短命の雄姿

ジャガーXJR-7は、アメリカン・スポーツカーレースの最高峰、IMSA GTP選手権で1986年から1988年にかけて活躍したプロトタイプレーシングカーです。グループ44によって開発・製作され、1985年末のデイトナ3時間でデビューを飾りました。ベースとなったのは、同チームが前年に投入したXJR-5ですが、ジャガーがトム・ウォーキンショー・レーシング（TWR）と提携して世界耐久選手権（WEC）に参戦するグループCカー「XJR-6」を投入したため、IMSA用マシンはXJR-7と命名されました。

当時、IMSA GTP選手権ではポルシェ962Cが圧倒的な強さを誇っていました。XJR-7は、この強豪ポルシェに対抗すべく開発されたマシンでしたが、1986年のシーズンは最終戦のデイトナ3時間レースでの1勝に留まりました。1987年にはリバーサイド500kmレースとウエストパームビーチ3時間レースで勝利を収めるなど健闘を見せますが、この年の終わりにジャガー本社の方針転換がグループ44の活動に大きな影を落とします。

ジャガー本社は、TWRが1987年に世界スポーツプロトタイプカー選手権（WSPC）でタイトルを獲得したことを受け、翌1988年シーズンからIMSA GTP選手権への参戦をTWRに委ねることを決定しました。その結果、グループ44への支援は打ち切られてしまいます。この決定の背景には、ル・マン24時間レース制覇を目指すTWRが、チーム規模の拡大を望んでいたことがありました。

1988年のル・マン24時間レースには、TWRから3台、そして新たに設立されたTWR USAから2台のジャガーXJR-9が出場しました。このXJR-9は、IMSA GTP選手権参戦用として開発されたマシンです。そして、1990年にル・マン24時間レースで優勝を飾ったジャガーXJR-12の3号車も、TWR USAによってドライブされました。これらの事実からも、ジャガーとTWRの戦略、そしてル・マン24時間レースという舞台が、XJRシリーズの開発とチームの動向に深く関わっていたことがわかります。

XJR-7にとって最後のレースとなったのは、1988年シーズンの開幕戦、デイトナ24時間レースでした。しかし、このレースでは残念ながらリタイアに終わりました。対照的に、このレースでデビューしたTWRのジャガーXJR-9は優勝を果たし、両チームの実力差が改めて浮き彫りとなりました。XJR-7の短い活躍は、レーシングの世界における技術開発競争と企業戦略の複雑な絡み合いを示す、興味深い事例と言えるでしょう。XJR-7の開発には、ポルシェ962に対抗するという明確な目標がありましたが、それはジャガー本社の戦略変更によって、残念ながら短期間で幕を閉じました。その短い期間ながら、XJR-7はIMSA GTP選手権において、その存在感を示したと言えるでしょう。

参考文献：『レーシングオンNo.472 Jaguar's C特集号』三栄書房 ISBN 978-4-7796-2237-3

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