ジャガー・XK120

ジャガーXK120：戦後英国を代表するスポーツカー

ジャガーXK120は、第二次世界大戦後の1948年から1954年にかけて、英国の自動車メーカー、ジャガーが製造した2シーターのスポーツカーです。1948年10月、ロンドンショーでジャガーマークVと共に発表され、翌1949年に発売されました。 車名に冠された「XK」は、1980年代まで使用されたジャガーの直列6気筒DOHCエンジンの型式名であり、「120」は最高速度が120mph（約193km/h）を超えることを示しています。

XK120は、その優れた性能と洗練されたデザインで、瞬く間に世界的な人気を博しました。特にアメリカ市場では大きな成功を収め、ジャガーの国際的なブランドイメージ確立に大きく貢献しました。

洗練されたデザインとパワフルなエンジン

XK120のボディデザインは、ジャガーの創業者であるウィリアム・ライオンズによるものです。ライオンズは、戦前の名車SS100と同様、美しいプロポーションと優雅な曲線を特徴とするデザインで知られており、XK120でもその才能が遺憾なく発揮されています。

初期の242台は軽量な[アルミニウム]]製ボディでしたが、生産効率向上のため、後にスチール製ボディへと変更されました。ボディスタイルは当初ロードスターのみでしたが、1951年には固定式ルーフのフィクストヘッド[[クーペ]、1953年にはソフトトップ付きのドロップヘッド[クーペ]が追加されました。

心臓部となるエンジンは、アルミ製シリンダーヘッドとツインSUキャブレターを備えた直列6気筒DOHCエンジンです。排気量は3,442ccで、標準仕様では最高出力160hp/5,500rpmを発揮しました。当時としては画期的なDOHCバルブ機構を採用し、戦前のSS100で採用されていたOHVエンジンから大きく進化を遂げています。このエンジンはXKエンジンとして知られ、ジャガー車の象徴的な存在となりました。

シャシーは、前輪独立懸架式サスペンション、コラム式ステアリング（長さは調整可能）、油圧ドラムブレーキを採用。ブレーキは、ディスクブレーキが普及する前の時代であったため、高速走行時のフェード現象が課題でした。ドアハンドルがなく、内側の紐を引いて開閉する独特の機構も特徴的です。ワイヤホイールや、高出力エンジン、強化サスペンション、デュアルエグゾーストシステムなどを備えたSE（Special Equipment）パッケージといったオプションも用意されました。

圧倒的な性能とモータースポーツでの活躍

自動車雑誌「ザ・モーター」のテストでは、ロードスターモデルが最高速度200.5km/h、0-60mph加速10.0秒という驚異的な性能を記録しました。当時、価格も比較的安価で、性能比で考えれば非常に魅力的な価格設定でした。

XK120は、その優れた性能を活かし、モータースポーツでも活躍しました。1950年のル・マン24時間レースで12位入賞を果たし、この成功を機にジャガーはXK120をベースとしたレーシングカー、Cタイプの開発に着手。Cタイプは1951年と1953年にル・マン24時間レースで優勝を果たすなど、数々の勝利を収めました。また、ワークスラリーカー「NUB120」は、1950年から1951年にかけてアルパインラリーで連続優勝を果たすなど、数々の輝かしい戦績を残しました。

生産終了とその後

1954年、改良型のXK140が登場するとXK120の生産は終了しました。総生産台数は12,120台で、その大部分が輸出され、特にアメリカ市場で大きな成功を収めました。当時のアメリカではスポーツカーブームが到来しており、XK120はブームの中心車種の一つとなりました。ハリウッドスターのハンフリー・ボガート、イングリッド・バーグマン、クラーク・ゲーブルなどもXK120を愛用していました。日本にも駐留米軍を通じて多数輸入され、当時の自動車愛好家にとって憧れの存在でした。

XK120は、優れたデザイン、高い性能、そしてモータースポーツでの成功により、ジャガーの歴史に燦然と輝く名車として、現在でも高く評価されています。

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