ジャギュレイター

ジューダス・プリーストの13作目のスタジオ・アルバムとして、1997年に世に送り出されたのが『ジャギュレイター』である。この作品は、長年にわたりバンドのボーカリストを務めたロブ・ハルフォードが1992年に脱退した後、新たな体制で制作された初めてのアルバムであり、ティム・"リッパー"・オーウェンズを新ボーカルに迎えた記念すべき一枚となった。

制作背景

ハルフォードの脱退という大きな変化に直面したバンドの中心人物であるギタリストのグレン・ティプトンとK. K. ダウニングは、後任ボーカリストがまだ見つかっていない状況にも関わらず、精力的に楽曲制作を開始した。1996年1月には、すでに一部の楽曲のバッキング・トラックの録音を完了させていたという。その後、大規模なオーディションを経て、優れた才能を持つティム・"リッパー"・オーウェンズが新たなボーカリストとしてバンドに加入。彼の加入によって、長らく停滞していたバンド活動は再び動き出し、遂に本作のリリースへと繋がった。オーウェンズは、熱狂的なジューダス・プリーストのファンであり、その歌唱力はバンドメンバーを唸らせるほどであったと言われている。

音楽性

本作でジューダス・プリーストは、従来のメロディックで疾走感あふれるヘヴィメタルサウンドとは一線を画す、よりヘヴィでアグレッシブな音楽性を追求している。アルバム全体を通して「重厚さ」が最大のキーワードであり、そのサウンドを特徴づける要素として、多くの楽曲でギターサウンドにダウン・チューニングが採用されている点が挙げられる。これにより、リフはより低く、分厚い響きとなり、アルバムに圧倒的な重量感をもたらしている。ティム・オーウェンズのパワフルでレンジの広いボーカルも、この新しいサウンドにマッチしており、バンドの新たな一面を引き出している。彼はロブ・ハルフォードに匹敵するハイトーンとアグレッシブなシャウトを使いこなしつつも、彼自身の個性を確立し、バンドのモダンなサウンドに貢献している。楽曲の構成も、以前よりも複雑で長尺なものが含まれるようになり、実験的な試みも垣間見える。

セールスと評価

本作の商業的な成功は、バンドのキャリアの中で見ると必ずしも輝かしいものではなかった。特にバンドの本国であるイギリスでは、残念ながら主要なアルバムチャートにランクインすることができなかった。これは、長年のファンが求めるクラシックなジューダス・プリースト像と、バンドが当時模索していたモダンなヘヴィネスとの間の乖離を示している可能性がある。しかし、その一方で、日本では熱心なファンからの支持を集め、オリコンチャートでトップ10入りを果たすなど、異なる市場で異なる評価を得ることとなった。この結果は、バンドのサウンドの変化が、聴衆によって賛否両論を巻き起こしたことを示唆しているかもしれない。一部の評論家やファンからは、そのモダンなサウンドとオーウェンズのボーカルを評価する声もあったが、長年のファンの中には、ハルフォード時代のサウンドとの違いに戸惑いや批判的な意見を持つ者も少なくなかった。本作は、セールス面では苦戦したものの、バンドが新たな方向性を模索した意欲作として、その後のキャリアに影響を与えることとなる。

特記事項

収録曲の中から「ブラッド・ステインド」は、1998年に公開されたホラー映画『チャイルド・プレイ/チャッキーの花嫁』のサウンドトラックに採用され、映画を通じて新たなリスナーにバンドの存在を知らしめるきっかけの一つとなった。

収録曲

全曲ともK. K. ダウニングとグレン・ティプトンの共作である。

1. ジャギュレイター - Jugulator - 5:51
2. ブラッド・ステインド - Blood Stained - 5:26
3. デッド・ミート - Dead Meat - 4:43
4. デス・ロウ - Death Row - 5:04
5. ディキャピテイト - Decapitate - 4:39
6. バーン・イン・ヘル - Burn in Hell - 6:42
7. ブレイン・デッド - Brain Dead - 5:24
8. アブダクターズ - Abductors - 5:49
9. ブレット・トレイン - Bullet Train - 5:10
10. キャシードラル・スパイアーズ - Cathedral Spires - 9:17

参加ミュージシャン

ティム・"リッパー"・オーウェンズ：ボーカル
K. K. ダウニング：リードギター
グレン・ティプトン：リードギター
イアン・ヒル：ベース
* スコット・トラヴィス：ドラムス

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