ジャズ組曲 (ショスタコーヴィチ)

ショスタコーヴィチの意外な一面：ジャズ組曲

『ジャズ組曲』は、20世紀のソ連を代表する作曲家ドミートリイ・ショスタコーヴィチが作曲したオーケストラのための組曲です。第1番と第2番の2つの組曲が存在し、各曲は完全なオリジナルではなく、既存の楽曲からの転用や編曲を含んでいます。

ショスタコーヴィチは、ソビエト・ジャズ委員会に所属し、ソ連国内におけるジャズの普及と楽団のレベル向上を目的に本作を作曲しました。彼の作風は、交響曲や弦楽四重奏曲に代表される、戦争をテーマにした重厚で暗いイメージが一般的ですが、『ジャズ組曲』は、そのイメージとはかけ離れた、軽快で親しみやすい音楽です。この作品は、ショスタコーヴィチの意外な一面を垣間見ることができる貴重な作品と言えるでしょう。

ただし、楽曲の内容は、現代的な意味での「ジャズ」とは異なり、ダンス音楽の要素が強く反映されています。そのため、純粋なジャズを期待すると、少し違った印象を受けるかもしれません。

編成

楽器編成は、一般的なオーケストラやジャズバンドというよりも、ライトミュージックやプロムナードコンサートで演奏されるような編成に近いのが特徴です。

第1番
ソプラノ・サクソフォーン（B♭）
アルト・サクソフォーン（E♭）
テナー・サクソフォーン（B♭）
トランペット（B♭）2
トロンボーン
小太鼓
ウッドブロック
シンバル
グロッケンシュピール
シロフォン
バンジョー
ハワイアン・ギター
ピアノ
ヴァイオリン
コントラバス

各パート1名ずつで、ソプラノ・サクソフォーンはアルト・サクソフォーン奏者が持ち替えます。

第2番（マクバニー編）
アルト・サクソフォーン（E♭）2
テナー・サクソフォーン（B♭）2
バリトン・サクソフォーン（E♭）
トランペット（B♭）4
トロンボーン2
チューバ
ドラムセット
トライアングル
シロフォン
グロッケンシュピール
バンジョー3
ギター3
ピアノ
ヴァイオリン6
コントラバス2

舞台管弦楽のための組曲第1番
ピッコロ（持ち替えで第2フルート）
フルート
オーボエ
クラリネット（B♭とA）2
アルト・サクソフォーン（E♭）2
テナー・サクソフォーン（B♭）2（1番はソプラノ・サクソフォーン（B♭）持ち替え）
ファゴット
ホルン3
トランペット3
トロンボーン3
チューバ
ティンパニ
トライアングル
タンブリン
小太鼓
ハイハット
サスペンデッド・シンバル
シンバル
大太鼓
グロッケンシュピール
シロフォン
ヴィブラフォン
ギター
アコーディオン
チェレスタ
ハープ
ピアノ2台（または1台四手）
弦五部

各曲について

第1番

1934年に作曲されました。全3曲で構成され、演奏時間は約8分です。

1. ワルツ
2. ポルカ
3. フォックストロット

第2番

オリジナルの第2番は1938年に作曲されましたが、戦争によってオーケストラの楽譜が消失してしまいました。1999年にピアノ総譜が発見されるまで、その内容は謎に包まれており、無関係の「舞台管弦楽のための組曲」と混同されることもありました。イギリスの作曲家ジェラルド・マクバニーによってオーケストレーションが行われ、2000年9月9日に初演されました。全3曲で構成されています。

1. スケルツォ
2. 子守歌
3. セレナーデ

舞台管弦楽のための組曲第1番

1950年代に作曲されました。本来の題名は「舞台管弦楽のための組曲」第1番ですが、前述のジャズ組曲第2番が発見される以前は、誤って「ジャズ組曲第2番」として知られていました。全8曲からなり、既存の作品からの引用やアレンジがみられます。演奏時間は約25分です。

1. 行進曲（映画音楽「コルジーンキナの出来事」より）
2. リリック・ワルツ
3. ダンス第1番（映画音楽「馬あぶ」より）
4. ワルツ第1番
5. 小さなポルカ
6. ワルツ第2番（映画音楽「第1軍用列車」より。「セカンド・ワルツ」という通称で知られる有名曲。）
7. ダンス第2番（バレエ音楽「明るい小川」より）
8. フィナーレ

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