ジャッキー・イクス

ジャッキー・イクス: 伝説のドライバー

ジャッキー・イクス（Jacques Ickx）は、1945年にベルギーのブリュッセル近郊で生まれ、F1やル・マン24時間レースでの輝かしいキャリアを築いた著名なレーシングドライバーです。「ル・マンのキング」と称される彼は、ル・マン24時間レースでの6回の勝利を誇り、その影響力はモータースポーツ界においても際立っています。イクスは、レーシングドライバーとしての技術に加え、家族においてもレーシングドライバーの血筋を受け継いでいます。兄のパスカル・イクスや娘のバニーナ・イクスもレースで活躍しています。

生い立ちと初期のレース活動

イクスは父親がモータージャーナリストであった家庭に生まれましたが、若い頃はレースに興味を持たなかったといいます。父に連れられて訪れたベルギーグランプリでは、「また来年も見に行かなければならないのか？」という疑問を口にするほどでした。しかし、14歳の時に父が50ccのバイクを買い与えたことで彼の運命は大きく変わっていきました。これをきっかけにトライアルに熱中し、やがて二輪から四輪への転向を果たしました。

特に1961年から1963年にはツェンダップの50ccで国内選手権を制し、18歳で四輪レースに挑戦するためBMW・700を運転し始めました。デビュー戦では不運にもスピンしてしましましたが、その後もレース活動を続け、成功を収めていきました。

フォーミュラ1の舞台へ

1967年、イクスは西ドイツグランプリにティレルF2チームから参戦し、高速な予選タイムで注目を浴びます。1968年にはフェラーリに移籍し、母国グランプリで初の表彰台を獲得しました。また、この年のフランスグランプリでは大雨の中での勝利を果たし、「雨に強いドライバー」としての名声を得ることとなります。しかし、カナダグランプリでの事故により一時は出場を果たせなかったものの、その後も成績を上げていきました。

キャリアの変遷とル・マン

1970年代に入り、イクスはフェラーリのナンバーワンドライバーとして注目を集めますが、複雑な状況が続きました。1975年と1976年にはル・マン24時間レースで優勝し、彼のレース人生の中で特に印象的な業績となりました。特に評価されたのは、1969年の第37回ル・マン24時間レースにおいて自身初の勝利を収めた際の戦略です。

このレースでは、スタートの危険性を考慮し、イクスはあえて最後尾からスタートしましたが、レースを1位で締めくくりました。この決断は後にル・マン式スタートの廃止のきっかけにもなりました。

多才なドライバーとしての弛まぬ努力

また、イクスはパリ・ダカールラリーにも参加するなど、多岐にわたって活躍を続けました。1983年にはメルセデス・ベンツで優勝を果たし、ル・マンとダカールの両レース制覇を達成した唯一のドライバーとなりました。彼のレーシングキャリアは、レースだけに留まらず、安全意識を持っていたことでも知られています。

引退後の活動

1980年代になると、イクスはル・マン参戦に専念する傾向が強まりましたが、レース活動は依然として多彩でした。最後のル・マン参戦は1986年で、以降は公の場に姿を見せる機会が減りましたが、2018年には第86回ル・マン24時間レースのグランドマーシャルを務めました。彼の影響力や業績は、今もなお多くのファンに語り継がれています。

ジャッキー・イクスの存在は、単なる偉大なドライバーに留まらず、後進のドライバーたちにとってもモータースポーツの道しるべとなるでしょう。

もう一度検索