ジャック・モイヤー

ジャック・モイヤー：功績と影

ジャック・モイヤー（Jack T. Moyer、1929年3月7日 - 2004年1月10日）は、アメリカ出身の海洋生物学者です。彼は日本の自然、特に三宅島の生態研究に深く関わり、数々の功績を残しました。

日本との出会いと自然保護活動

モイヤーが日本と出会ったのは、コルゲート大学在学中の1948年、朝鮮戦争への従軍でした。彼は三宅島近くの大野原島（通称：三本岳）に希少種のカンムリウミスズメが生息していることを知り、アメリカ軍の爆撃訓練を阻止するため、ハリー・S・トルーマン大統領の側近に手紙を送りました。この行動が訓練中止につながり、彼は日本の自然保護に貢献することになります。

1954年にアメリカへ帰国後、モイヤーは大学を卒業。1957年には三宅島へ英語教師として赴任し、その後永住を決意します。彼はアカコッコをはじめとする動植物、特に海洋生物の研究に没頭しました。

研究者としての功績

モイヤーは、クマノミの性転換や、三宅島に生息する魚類の一種であるミヤケテグリ（ネズッポ科）などを発見しました。これらの研究成果が認められ、1984年には東京大学から「魚の繁殖生態」で博士号を授与されています。彼は研究者として、日本の海洋生物学に大きな足跡を残しました。

2000年、三宅島が噴火し、島民は全島避難を余儀なくされました。モイヤーも東京都北区の都営住宅へ転居しますが、同時期に経営していたフィリピンの自然学校の経営が悪化し、経済的な苦境に立たされます。噴火活動が収束すると、彼は再び三宅島周辺でサンゴ礁の調査を始めました。

自死

ジャック・モイヤーは、ジャック・マイヨールについて「自殺は良くないね」と評していましたが、自身も2004年1月、避難先の都営団地で自ら命を絶ちました。妻への感謝を綴った遺書が残されていました。

長期間にわたる性加害

モイヤーの死後、彼が長年にわたり、勤務先のアメリカンスクール・イン・ジャパン (ASIJ) で数十人の女子生徒に性的虐待を加えていた事実が発覚しました。ASIJは1970年代後半から複数回にわたり被害の通告を受けていましたが、適切な対処をしていませんでした。2000年、被害女性たちが被害の公表を通告すると、その数日後にモイヤーは自死しました。

被害者女性と卒業生らはジャパンタイムズに性的被害を告発し、2014年3月に報道されました。これを受け、ASIJは初めて全生徒、学校関係者、卒業生へ謝罪のメールを送信しました。同年6月には、1962年頃から2000年頃の期間にASIJと関係があったモイヤーによる性的虐待被害の申し立てに関する独立調査を発表し、ウェブサイトで公表しました。

音楽活動

モイヤーは音楽にも造詣が深く、『PAPA JACK MOYER 地球の子供たちへ TO THE CHILDREN OF THE EARTH -You are the Future-』というCDもリリースしています。このCDでは、ジャズピアニストの佐山雅弘らがサポートを務めました。

まとめ

ジャック・モイヤーは、日本の自然保護に貢献した偉大な海洋生物学者である一方、長年にわたる性加害という許されない行為を行っていた人物でした。彼の功績と罪は、深く記憶されるべきでしょう。

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