ジャハーンダール・シャー

ジャハーンダール・シャーの生涯

ジャハーンダール・シャー（1661年5月9日 - 1713年2月11日）は、ムガル帝国の第8代皇帝として短い期間ではあったが、重要な歴史の一端を担った人物です。彼は前任者のバハードゥル・シャー1世の長男であり、母はニザーム・バーイーでした。彼の政治における運命は激しい権力闘争とその後の悲劇的な結末に支配されていました。

皇位継承戦争と即位

ジャハーンダール・シャーの治世は、彼の父の死後に始まる皇位継承戦争からスタートします。1712年2月27日、バハードゥル・シャー1世が亡くなると、彼とその三人の弟たちの間で、帝位を巡る争いが始まりました。特に、ベンガル太守のアズィーム・ウッシャーンが最有力候補となりました。アズィーム・ウッシャーンは、軍事力と財源が豊かであったため、当時の最有力者として立ちはだかる存在でした。

しかし、数ヶ月間の権力闘争の結果、結局ジャハーンダール・シャーが生き残り、皇位につきました。彼はほかの三兄弟を次々に抹殺する熾烈な戦いを経て、ムガル帝国の皇帝となったのです。

ズルフィカール・ハーンによる政治

ジャハーンダール・シャーが皇帝として即位するも、実権は宰相であり財務大臣であったズルフィカール・ハーンに握られていました。彼は、貴族たちの支持を得てジャハーンダール・シャーを支援したため、この状況が生まれました。しかし、ジャハーンダール・シャーはズルフィカール・ハーンに心から信頼を寄せていたわけではありませんでした。

ズルフィカール・ハーンは、敗者の貴族の財産を没収し、強力な経済政策を推し進める一方で、農民に対して過剰な税金を課しました。彼は、税収を確保するための徴税請負制度「イジャーラー」を導入しましたが、これが農民の苦しみを一層深める結果となったのです。また、彼はラージプートとの連携を強化する一方、シク教徒との対立を続ける姿勢を貫きました。

破滅と死

ジャハーンダール・シャーは、ズルフィカール・ハーンの影響下で無能な政治を続ける一方、放蕩な生活を送っていました。この怠惰な態度とズルフィカール・ハーンへの嫉妬から、貴族たちの間で不満が高まりました。彼は最終的にズルフィカール・ハーンを排除する陰謀を練りましたが、すでに遅すぎたのです。

これに乗じて、アズィーム・ウッシャーンの遺児ファッルフシヤルが反乱を起こしました。彼はベンガルで帝位を宣言し、連合軍を結成してデリーへ進軍しました。ジャハーンダール・シャーはズルフィカール・ハーンと共に軍隊を結集しましたが、立ち向かうことはできませんでした。第二次サムーガルの戦いで皇帝軍は敗北し、ファッルフシヤルがムガル皇帝に即位することとなります。

捕らえられたジャハーンダール・シャーは幽閉され、最終的にファッルフシヤルによって命を絶たれました。その後、彼の遺体はデリーの城門に放置され、腐敗するままにされるという屈辱的な最期を迎えました。一方で、ズルフィカール・ハーンも彼の運命に従わざるを得ず、同様に処刑されました。

家族

ジャハーンダール・シャーにはいくつかの妻と多くの子供がいました。彼の正室にはミールザー・ムカッラム・ハーンの娘やラール・クンワールなどがいました。彼には4人の息子と3人の娘がいました。彼の家族もまた、彼の不運な運命に巻き込まれることになります。

ジャハーンダール・シャーの短い治世は、権力闘争とそれに伴う悲劇的な結末の象徴として、ムガル帝国史に刻まれています。

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