ジャパン・サムライ・ベアーズ

ジャパン・サムライ・ベアーズの軌跡

ジャパン・サムライ・ベアーズは、2005年という短期間のみ、アメリカ合衆国のプロ野球独立リーグであるゴールデンベースボールリーグ（GBL）に加盟していた野球チームです。最大の特徴は、所属選手が全て日本人で構成されていた点にあります。このチームは通称「サムライ・ベアーズ」と呼ばれました。

チーム結成と始動

チーム設立の背景には、日本やメジャーリーグでのプレーを目指す若手選手、あるいは一度プロの世界を経験しながらもNPBなどで解雇され、再起を図る選手たちの存在がありました。彼らはチームが実施したトライアウト（入団テスト）に合格した者や、当時のリーグ副コミッショナーを務めていた江本孟紀氏の人脈を通じて集められ、およそ24名の選手によって構成されました。チームを率いる監督には、読売ジャイアンツでの活躍で知られるウォーレン・クロマティ氏が就任しました。選手の給与は最低700ドルという条件でした。

コーチ陣には、元横浜ベイスターズの堀井恒雄氏が投手コーチを務め、トレーナーとしては、ロサンゼルス・ドジャースなどで経験を積み、NATA公認トレーナーおよび米国医師免許を持つ友広隆行氏がチームを支えました。選手の中には、元ヤクルトスワローズの五十嵐貴章氏、元広島東洋カープの青木智史氏、MLBのエクスポズ傘下3Aでのプレー経験を持つ根鈴雄次氏らが名を連ねていました。

困難なシーズンとチームの運営

2005年シーズン、サムライ・ベアーズには固定のホームグラウンドがありませんでした。そのため、チームはカリフォルニア州やアリゾナ州に本拠地を置く他の7球団の球場を、一台のバスで移動しながら転戦するという過酷なスケジュールをこなしました。常にホテルでの宿泊を続けたその活動形態から、「トラベリング・チーム」とも称されました。試合では、カブトをかぶったクマの着ぐるみマスコット、「サミー」がチームを盛り上げていました。

チーム運営においては、クロマティ監督の経験不足が露呈し、選手起用などで試行錯誤が繰り返されました。甲子園での松井秀喜選手への5打席連続敬遠で知られる河野和洋氏（専修大学出身、ヤマハ経由）を含む、多くの選手がシーズン中にチームを離れ、新たな選手が加わるなど、メンバーの入れ替えが頻繁に行われました。さらに、クロマティ監督はファンや選手、審判との間で度々トラブルを起こし、シーズン終了を待たずにチームを解雇されるに至りました。

シーズン結果とチームの終焉

苦難の多かった2005年シーズンの成績は33勝57敗と振るわず、ゴールデンベースボールリーグの最下位に沈みました。観客動員も期待されたほど伸び悩み、財政的な課題を抱えていました。こうした状況に加え、リーグ全体の再編計画の中でチーム削減の対象とされた結果、ジャパン・サムライ・ベアーズのアメリカ独立リーグにおける挑戦は、わずか1年という短い期間で幕を閉じ、チームは解散しました。

しかし、チームは遠征先で思わぬ支援も受けていました。カリフォルニア州フラートンでは、在米邦人らが結成した応援団「侍熊会」が、浴衣を着て太鼓を叩くなど、異国の地で奮闘する選手たちに温かい声援を送っていました。

解散後の歩み

シーズン終了後、日本に帰国した選手たちは、江本孟紀氏が再び指揮を執る「サムライ・ファイヤーバーズ」として、複数のチームと親善試合を行いました。これには、相模原クラブ、湘南シーレックス（当時横浜ベイスターズの二軍）、NOMOベースボールクラブ、阪神タイガース二軍などが含まれます。その後、チームは社会人野球のクラブチーム「京都ファイアーバーズ」と名前を改め、新たなスタートを切りました（現在のチーム名は京都城陽ファイアーバーズ）。ただし、サムライ・ベアーズに所属していた選手は、全員が2006年までにこのチームを離れています。なお、かつてのベアーズの選手の一部は、岩手21赤べこ野球軍団へ移籍しています。

チームの活動は、海を越えて記録にも残されました。2007年には、チームのグラウンド内外での姿を追ったドキュメンタリー映画『Season of the Samurai』が製作・公開され、彼らの挑戦の軌跡が映像として語り継がれています。

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