ジャパン・モバイルキャスティング

株式会社ジャパン・モバイルキャスティング：短命に終わったモバイル放送事業者の軌跡

株式会社ジャパン・モバイルキャスティング（Japan Mobilecasting, Inc.、略称：Jモバ）は、かつて存在した携帯電話向けマルチメディア放送事業者です。地上アナログテレビ放送の停波後に空いたVHF-high帯の周波数を利用し、全国規模の放送サービスを提供していました。NTTドコモグループのmmbi株式会社の完全子会社として設立され、サービス名は『モバキャス』として親しまれていました。

サービス開始と事業展開

Jモバは、元々株式会社マルチメディア放送が取得していた移動受信用地上放送の事業許可を承継する形で設立されました。2011年の放送法改正により、放送事業者はハードウェア（送信設備）とソフトウェア（番組）を分離する必要が生じ、その結果として設立された企業です。

2012年4月、Jモバは『モバキャス』サービスを開始。mmbiが提供するマルチメディア放送サービス『NOTTV』の送信業務を担いました。当初は順調に見えた事業でしたが、新規参入企業の少なさや、既存のテレビ放送事業者の参入を許した総務省の方針などが影響し、次第に苦戦を強いられるようになりました。

その後、サービスを拡大するべく、テレビジョン放送への参入も図り、2015年4月には全国でテレビジョン放送を開始しました。しかしながら、『NOTTV』の契約者数は伸び悩み、残念ながら2016年6月30日にサービスは終了することとなりました。

サービス終了と企業の解散

『モバキャス』サービス終了に伴い、Jモバはmmbiに吸収合併され、同時にmmbiもNTTドコモに吸収合併されることで、わずか5年半の歴史に幕を閉じました。

技術面と地理的展開

Jモバは、全国各地に送信所を設け、サービスを提供していました。送信周波数は214.714286MHzに統一され、北海道から沖縄まで広いエリアをカバーしていました。送信所は、東京スカイツリー（墨田送信所）を初め、主要都市を中心に展開。サービス開始当初はマルチメディア放送に特化していましたが、後にテレビジョン放送も開始しました。

サービス提供エリアは、北海道、東北地方、関東、甲信越、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄と全国に及びました。ただし、滋賀県と奈良県には送信所が設置されませんでした。神奈川県平塚市には平塚送信所を計画していましたが、実現には至りませんでした。

まとめ：時代の波にのまれたモバイル放送事業者

Jモバは、時代の先端を行くモバイル放送事業者としてスタートしましたが、市場のニーズや競争環境の変化に対応しきれず、短い期間でその幕を閉じました。その歴史は、新たな技術やサービスが台頭する中で、いかに事業を継続していくかの難しさを示す一つの事例と言えるでしょう。Jモバの経験は、今後のモバイル放送事業や、新たなメディアビジネスの展開を考える上で重要な教訓を与えてくれます。

沿革詳細

2011年:

1月11日：会社設立（千代田区永田町）。
2月16日：マルチメディア放送から事業許可を承継。
6月27日：本社を港区赤坂に移転。
9月14日：墨田送信所（東京スカイツリー）の予備免許を取得。
年末までに計12局の予備免許を取得。
11月2日：スカパーJSATと衛星通信サービス契約。

2012年:

4月1日：東京、名古屋、大阪、福岡、沖縄那覇などでマルチメディア放送開始。
以降、順次全国各地で開局。

2013年～2015年:

放送事業への参入条件緩和を受け、全国各地での開局を継続。
2015年4月1日：全国でテレビジョン放送開始。
11月27日：2016年6月30日をもってモバキャス終了を発表。

2016年:

6月30日：モバキャスサービス終了。
* 7月1日：mmbiに吸収合併され解散。

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