マルチメディア放送

マルチメディア放送とは

マルチメディア放送とは、放送波や通信回線を利用して、音声、映像（簡易動画）、データなどのコンテンツをストリーミング配信やダウンロード配信を行い、それらを組み合わせて実現する放送形態のことです。この放送形態は、従来のテレビ放送とは異なり、多様なコンテンツをモバイル端末などで手軽に楽しめることを目指しています。

技術方式

国際電気通信連合（ITU-R）の勧告に基づいて、以下の4つの方式が国際標準規格として定められています。

ISDB-T: 日本で地上デジタル[[音声放送]]の試験放送に用いられた後、標準方式として採用されました。
DVB-H: イタリアで使用されています。
MediaFLO: アメリカのクアルコムが開発し、「VCAST mobile TV」に採用されました。日本でも標準方式に採用されましたが、後に撤退しました。
T-DMB: 大韓民国で使用されています。

歴史

マルチメディア放送は、2000年代初頭から様々な試みが行われてきました。以下に主な出来事をまとめます。

2004年: DVB-Hが制定されました。
2005年: 韓国でT-DMB/S-DMB方式による放送が開始され、日本ではクアルコムジャパンとKDDIがメディアフロージャパン企画株式会社を設立しました。
2007年: アメリカでMediaFLOがサービスを開始しました。
2010年: 日本では、総務省が携帯端末向けマルチメディア放送の方式にISDB-Tmmを選定し、MediaFLOは落選しました。また、クアルコムはアメリカでのMediaFLO端末の販売を中止しました。
2011年: アメリカのMediaFLOサービスが終了しました。
2012年: 日本でNOTTVが開始されましたが、韓国の衛星DMB（S-DMB）は終了しました。
2016年: 日本でi-dioが放送を開始しましたが、NOTTVは終了しました。
2020年: i-dioが終了しました。

日本における展開

概要

日本の電波法では、マルチメディア放送は「2値のデジタル情報を送る放送であって、テレビジョン[[放送]]に該当せず、かつ、他の放送の電波に重畳して行う放送でないもの」と定義されています。放送法上は基幹[[放送]]の一種として扱われますが、動画を扱っていてもテレビジョン[[放送]]とは区別されます。

マルチメディア放送は、移動受信用地上基幹[[放送]]として、民間放送事業者によって実施されることが想定されており、地上アナログテレビ放送終了後のVHF帯の一部を利用します。

技術的には、地上デジタルテレビ[[放送]]の機能を発展させたもので、リアルタイム受信だけでなく、蓄積型放送も可能です。専用の受信機が必要で、携帯端末での受信が主な目的とされています。

事業展開の失敗

日本国内では、以下の3種類のサービスが展開されました。

全国[[放送]]: V-high帯を利用した有料放送で、NTTドコモ傘下のジャパン・モバイルキャスティング（Jモバ）とmmbiが「NOTTV」としてサービスを提供しました。
広域[[放送]]・県域放送: V-low帯を利用した無料・有料混在放送で、TOKYO FM関連会社が「i-dio」としてサービスを提供しました。
新型コミュニティ[[放送]]: 地域向けの無料放送として計画されましたが、実現には至りませんでした。

しかし、これらのサービスは事業展開に失敗し、VHF帯の利用は停滞しています。

詳細な沿革

マルチメディア放送は、様々な変遷を経て現在に至っています。

1990年代: ファクシミリ放送やサテラビュー向けデータ[[放送]]など、デジタル放送の基礎となる技術が開発されました。
2003年: デジタル[[ラジオ]]推進協会が地上デジタル[[音声放送]]の試験放送を開始しました。
2004年: モバイル[[放送]]がモバHO!を開始しましたが、法令上は超短波放送として扱われました。
2006年: マルチメディア放送推進のため、NTTドコモ、フジテレビジョンなどが出資してmmbiが設立されました。
2007年: 総務省の情報通信審議会で、VHF帯の一部がデジタル[[ラジオ]]などの放送に割り当てられました。また、総務省が携帯端末向けマルチメディア放送に関する懇談会を開催しました。
2008年: 携帯端末向けマルチメディア放送の周波数帯が決定され、モバHO!がサービス終了を発表しました。
2010年: 放送法に移動受信用地上放送が定義され、マルチメディア放送の標準方式が定められました。また、株式会社マルチメディア放送のISDB-Tmm方式が選定されました。
2012年: mmbiが「NOTTV」を開始しました。
2013年: 移動受信用地上基幹[[放送]]でテレビジョン[[放送]]ができるようになり、基幹[[放送]]普及計画にテレビジョン[[放送]]が追加されました。
2015年: モバキャスを利用したスカパーなどのテレビジョン[[放送]]が開始されましたが、NTTドコモがNOTTVとモバキャスの終了を発表しました。
2016年: NOTTVとモバキャスが終了し、i-dioが本放送を開始しました。
2020年: i-dioが終了しました。

V-Low帯マルチメディア放送

2008年: ラジオ局などが中心となり、V-Low帯マルチメディア放送の準備が進められました。
2009年: TOKYO FMなどが実験放送を開始しました。
2011年: 多くの放送局がV-Lowマルチメディア放送への参入を希望しました。
2013年: ラジオ局の全社がV-Lowマルチメディア放送に移行することは合意できませんでした。
2014年: TOKYO FMなどが中心となり、V-low帯マルチメディア放送事業の統括会社とハード事業者が設立されました。
2015年: i-dioのサービス名が発表され、試験電波の発射が開始されました。
2016年: 東京・大阪・福岡でi-dioの本放送が開始されました。
2017年: i-dioの放送エリアが拡大されました。
2019年: エフエム東京がi-dio事業の赤字を隠すための不適切な株取引を行っていたことが発覚し、i-dioのチャンネルの一つが放送終了を発表しました。エフエム東京はi-dio事業への追加投資を行わない方針を表明しました。
2020年: i-dioの全サービスが終了しました。

海外における展開

マルチメディア放送は、アメリカ、イギリス、ドイツ、韓国などでも展開されましたが、多くは短期間でサービスを終了しています。

アメリカ: クアルコムが開発したMediaFLO方式でサービスが提供されましたが、2011年に終了しました。
イギリス: Virgin MobileがBT Movioという名称でサービスを提供しましたが、2008年に終了しました。
ドイツ: Debitelがwatchaという名称でサービスを提供した後、mobile3.0が試験放送を行いましたが、いずれも終了しました。
* 韓国: T-DMB方式で2005年からサービスが開始されました。

まとめ

マルチメディア放送は、多様なコンテンツをモバイル端末で楽しめる可能性を秘めた放送形態でしたが、日本では事業展開に失敗し、VHF帯の利用は停滞しています。海外でも同様のサービスが展開されましたが、多くは短期間で終了しています。今後の技術革新や市場の変化によっては、新たな可能性が生まれるかもしれません。

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