ジャミング・ウィズ・エドワード

『ジャミング・ウィズ・エドワード』（原題：Jamming with Edward!）は、ローリング・ストーンズの活動において、異色の存在感を放つアルバムです。1969年、バンドが『レット・イット・ブリード』のレコーディング中に起きた出来事が、このアルバムの誕生へと繋がります。

当時、キース・リチャーズとゲスト参加していたライ・クーダーの間に何らかの衝突が発生し、キースがレコーディングを離脱。残されたミック・ジャガー、ビル・ワイマン、チャーリー・ワッツは、ニッキー・ホプキンスと共にセッションを続行しました。このセッションこそが、『ジャミング・ウィズ・エドワード』の源泉となっています。セッションは、特にレコード化を目的として行われたわけではなく、いわば即興演奏の集大成と言えるでしょう。

興味深いのは、ライ・クーダーが自身の演奏がキース・リチャーズによって盗用されたと主張している点です。このエピソードは、アルバム制作の裏側にある緊張感や、アーティスト間の複雑な人間関係の一端を垣間見せてくれます。

当初は日の目を見ることのなかったこれらのセッション音源ですが、ファンの熱烈な要望に応える形で、1971年10月にレコード化が決定。そして1972年1月、ついに世に出ることとなります。ジャケットデザインはニッキー・ホプキンスが手掛け、アルバム全体に漂う独特の雰囲気を作り出しています。

収録曲は、ニッキー・ホプキンス、ライ・クーダー、チャーリー・ワッツの共作を中心に構成されており、ブルージーな楽曲からアップテンポな演奏まで、多彩な楽曲が収録されています。特に「ブロウ・ウィズ・ライ」は、11分を超える大作で、セッションの熱気をそのまま感じさせる演奏となっています。

『ジャミング・ウィズ・エドワード』は、ローリング・ストーンズの既成概念を覆すような、実験的な側面を持つ作品です。バンドの定番スタイルとは異なる、より自由で奔放な演奏が展開され、各メンバーの個性が際立っています。また、ライ・クーダーのブルースギターは、このアルバムに独特の深みと味わいを与えています。

参加ミュージシャンは、ミック・ジャガー（ボーカル、ハーモニカ）、ライ・クーダー（ギター）、ニッキー・ホプキンス（ピアノ）、ビル・ワイマン（ベース）、チャーリー・ワッツ（ドラムス）と、豪華な顔ぶれ。それぞれのミュージシャンが持ち前のスキルを余すことなく発揮し、聴く者を魅了します。

『ジャミング・ウィズ・エドワード』は、単なるジャムセッションの記録にとどまらず、ローリング・ストーンズというバンドの深淵を垣間見ることができる、貴重な一枚と言えるでしょう。キース・リチャーズ不在という異例の状況下で生まれた、奇跡的なアルバムなのです。その実験的な試みと、各ミュージシャンの卓越した演奏は、今もなお多くの音楽ファンを惹きつけています。

このアルバムは、ローリング・ストーンズのディスコグラフィーの中でも、異彩を放つ存在です。彼らのメインストリームな作品とは異なる、隠れた魅力が詰まった、まさに『秘蔵盤』と言えるでしょう。

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