ジャンムー・カシュミール藩王国

ジャンムー・カシュミール藩王国

ジャンムー・カシュミール藩王国は、1846年から1947年まで、現在のインド北西部とパキスタン北東部にまたがるカシミール地方に存在した藩王国です。イギリスによって設立され、ヒンドゥー教の君主が統治しましたが、住民の大部分はイスラム教徒でした。

歴史

1846年、ジャンムーの領主であったグラーブ・シングは、第一次シク戦争でイギリス側に味方し、その講和に貢献しました。講和条約であるラホール条約締結後、グラーブ・シングはイギリスとの間でアムリトサル条約を締結し、これによりシク王国から割譲されたカシュミールを与えられました。この結果、ジャンムー・カシュミール藩王国が成立しました。

1947年8月15日のインド・パキスタン分離独立に際し、藩王国はどちらかの国に帰属する必要に迫られました。しかし、当時の藩王ハリ・シングはヒンドゥー教徒であり、住民の約80%がイスラム教徒という状況から、帰属先を決定できずにいました。

このような状況の中、パキスタンからの武力介入が発生し、1947年10月26日、ハリ・シングはインドへの帰属を表明し、同時にインド政府に派兵を要請しました。これが第一次印パ戦争の発端となり、その後も第二次印パ戦争、第三次印パ戦争、カールギル紛争と、両国間の紛争が継続することになります。現在も、この藩王国の領土はインドとパキスタンの係争地となっています。

歴代君主

グラーブ・シング（Gulab Singh, 在位：1846年 - 1856年）
ランビール・シング（Ranbir Singh, 在位：1856年 - 1885年）
プラタープ・シング（Pratap Singh, 在位：1885年 - 1925年）
ハリ・シング（Hari Singh, 在位：1925年 - 1947年）


この藩王国は、その成立から終焉に至るまで、複雑な宗教的、政治的背景を持ち、現代に至るまで印パ間の大きな紛争の種となっています。その歴史は、単なる藩王国の興亡に留まらず、現代の南アジア情勢を理解する上で重要な要素となっています。

参考文献

小谷汪之『世界歴史大系 南アジア史2―中世・近世―』山川出版社、2007年。
ビパン・チャンドラ 著、栗原利江 訳『近代インドの歴史』山川出版社、2001年。

関連項目

* 藩王国

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